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9話 ページ10
『あ、これじゃない？ホッチキス』
「ああ。ありがとう」
事務室の用具棚からA４紙とホッチキスを取り出す。
どことなくキラキラした目で俺にホッチキスを渡すAを見ていると、ふと思ってしまった。
「…犬？」
『え、急にどうしたの？』
「あ、いや」
『え？気になる』
「…でも」
『えー？』
「…怒んなよ？」
『場合によります』
「怒んなよ」
思わず口に出してしまったのが間違いだったな。
「なんとなく、前までのAは、読めない凛とした猫のようなやつだと思っていたが、最近はその…無邪気な子犬、みたいだと思ってな」
ああ、やっぱり言うんじゃなかった。恥ずかしいし気まづい。
でも言ってしまったものは仕方ない。開き直ろうではないか。
『は、初めて言われた…』
「俺の周りをうろちょろしてんのが、小型犬のようだ」
『私、そんなにグルッペンくんの周りうろちょろしてたかな』
照れたように下を向いているAを見て、言葉選びを間違えてしまったかもと少し後悔した。
「あー、いや、前より話すことが増えたからかもしれん。あんま気にすんな」
『うん。
犬、か…』
「すまん」
『いや怒ってないからね！
グルッペンくんにはそんな感じに見えてるんだなーって思っただけ』
ニカッとはにかむAを見て、心配し過ぎたんだと気づいた。
「そうか」
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作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
