4話 ページ5
Aに少し用事があり彼女の教室を訪れると、彼女は教室の奥の方で女子たちと談笑していた。
…やっぱり、楽しそうだ。
美人に人は集まってくるとは、まさにこのことか。順風満帆な学生生活か。良いじゃないか。
それでも良いじゃないか。
今さら思ったが、変わる必要はあるのだろうか。生まれ変わらなくたって、彼女は今のままで十分なんじゃないか？
そんなの、本人に聞かなきゃ分からんよな。
そんなことをボケっと考えていればAは俺に気づきこちらへやって来た。
『グルッペンくんどうしたの？誰かに用事？』
「あー、お前だ。このプリント各クラスに配布しておいてくれないか？」
『オッケー、良いよ』
プリントを手渡しながら嫌味なことを言う。
「楽しそうだな」
『え？』
「順風満帆の学生生活を体現しているようだな」
我ながらなかなかひねくれている。
俺の嫌な質問にAはジトッとした顔を向けてくる。
『嫌味で言ってる？』
「ふん、少しだけだがな」
『いけ好かないですよグルッペンさん。私は私のやり方があるの。グルッペンくんの前とみんなの前じゃ違うの。利用しろって言ったのはグルッペンくんでしょ？』
「ああ、そうだな。すまん、からかいすぎた」
Aのペースがあるから待てと言うことだろうか。
『優しくしてください』
「わかったわかった」
『じゃあ、これは配っておきます』
「よろしく頼む」
Aが嫌いなんじゃない。むしろ、彼女の根本にある人間らしさが好きだ。それを見失ってほしくはないんだ。
「…疲れたら、ちゃんと息抜きするんだぞ。俺のところに来たって構わない」
『…うん。ありがと。そうするね』
「ん」
彼女の心根を引き出せたらきっと彼女も辛くないだろう。
直接は聞かない。変わりたいか？なんて。
言わなくても薄らと感じる。Aが変わろうとしていること。
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作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
