14話 ページ15
Aと英語の勉強を始めて6日目。今日が教えられる最後の日だ。
Aはいつにも増して真剣に取り組んでいて、どれだけ本気なのかがよく分かる。
『グルッペンくん。これは？』
「ん？」
自分から質問をなげかけることにも慣れてきたようで、今ではたくさん質問をして来るようになった。
にしても目まぐるしい成長スピードだ。
やはり素質はあるんだな。ただそのやり方があまり良くなかっただけで。
もう壊滅的とは言わない程度にはなったな。
「少し休憩しよう」
『うん』
「A、この数日で結構できるようになったな」
『うん！自分でもびっくり。このまま頑張れたら小テストで赤点とることはなさそう』
嬉しそうにクスクス笑う。
「それはよかった」
最近2人でいる時間が増えてきて、感じることがある。
前までは、そもそも2人でいることなんてほとんどなかったし、なんなら完璧な仮面のせいで苦手意識があった。
でも今は、むしろ心地よいと感じる。
野郎どもといるのも十分楽しいが、Aとの時間にはまた違った楽しさがある。
最初はこんな仲になるとは思っていなかったのに、人生どう転がるかわからんな。
『ねぇ、グルッペンくん』
「なんだ？」
『その…グルさんって、呼んでもいい？』
「え、、…あぁ。構わないぞ」
『ほんと！よかった』
グルさんか。その声からグルさんという言葉を聞くのはまだ違和感がある。
なんだか新鮮だ。
「トン氏以外にグルさんって呼ばれることなかなかないからなんか不思議な気分だ」
『たしかに。
…実はちょっと、憧れてたんだよね。グルさんって呼ぶの』
「どんな呼び方でも大差ない」
『そうかな。私は、呼び方って大事だと思ってるよ。どんな呼び方をしてるかで、お互いの関係が表れるんじゃないかな、って』
「…ん。そうだな…」
じゃあ、俺たちの関係は？そう思った。
けど、なぜかその質問は口から出ることはなかった。いつもなら何も気にせず聞けるはずなのに、今はなんでか聞くことをためらってしまった。
今、自分のことがわからなくなった。
『じゃあ、グルさん一週間ありがとね。後は自分で頑張る』
「ああ。頑張れよ。どうしても困ったら、気が向いたら助けてやる」
『え〜、そこはいつでも助けてやる、でしょ？』
「ふ、冗談だ。いつでも頼れ」
『……うん』
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作者名：煽田 -アオタ- | 作成日時：2022年6月19日 21時
