Lost of the Hero 【相澤消太】 ページ10
＿＿＿ヒュー、ドカン
ぱちぱちと散っていく花火。
祭りの人混みを抜け出して崖の上から広い街を見下ろす
『ね、いったでしょ？ここが特等席だって』
「……あぁ、よく見えるな。」
キラキラしたその景色は今でも頭の中に焼き付いている。
「……そろそろ戻らないと白雲が心配するだろ」
『えぇ、もう少しだけ!!』
「もう花火も終わる時間だ。人混みで合流できなくなったらどうしようもない」
『そーかもだけど…』
「別に、また来年も来ればいいだろ」
『ほんと？ショータくん言ったたからね！？約束ね』
「はいはい」
その約束は置き去りにされたまま何度目かの夏が過ぎる。
やんやと騒ぐ彼女の声は花火よりも鮮明に覚えていて
夏の暑さに火照った体温もまるで昨日のよう。
きっと俺たちはあの時から止まった時間を過ごしている
＿＿＿パチパチパチ。
暗い部屋の窓の外、花火が弾け散る
「……水飲むか？」『うん、ありがとう』
寝室で包まる彼女に水飲ませてやる。
あの時花火を真っ直ぐに見ていた2人はいつしか
身体を求め合う関係に。
けれどそれは決してあの日のような純粋なものではない。恋人とは言えないそんな曖昧な名前のない関係性。
ただ胸の中の空白を互いの愛で埋めていくような。
そんな下らない関係性。
『なんでさ、ショータくんは私を教師に誘ったの？』
｢それ今聞くか？｣
『ピロートーク位付き合ってよ』
｢…お前がなるべきだと思ったから声をかけた。
それだけだよ｣
『そう？私はてっきりお兄ちゃんの方誘うと思ってた』
「それは……」
『ほら、子供に好かれるのってどちらかというとお兄ちゃんだし』
彼女の兄、白雲朧。
高校時代を共に過ごした友人の1人。そして＿＿＿
｢……お前なぁその格好で兄貴の話するのやめろ｣
今ココには居ないその存在。
『あ、でもお兄ちゃん勉強教えるの苦手そう』
彼女の兄はとっくに死んでいる。
あの日、俺の傍で小さな子供たちを助けてそのまま。
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
