貴方に送る愛言葉【ヒロアカ短編集】 (ページ8)

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② ページ8

どうして＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。

世間からすればおぞましいと言われることをしたのに。
世間からすれば、おかしいって言われることをしたのに。
あの子はなんて事ないように話しかけてくる。

普通の道からそれた私とあの子はお友達でいようとしてくれる。それはとっても嬉しいこと。だけど＿＿＿＿＿

「駄目です」

トガの視線は真っ直ぐとAを貫く。

口の間にまだある愛しい彼の色がトガの中に溶け込んでいく。その血をあの子はじっと見ていた。

『私になればもっと遠くまでいけるでしょ?』

ザザーン。

波の音にかき消されそうなか細い声。
それでも確かにハッキリとトガの耳にそう届いた。

『私が居なくなっても皆気づかないから大丈夫』

なんて事のないように彼女は哀しい言葉をいう。
いつもあの子は独りで、いつもあの子は私の傍に居てくれた。

知っている。
高校を受験してなかったことも就職さえしなかった事も
＿＿＿あの子はきっと、人生のこの先を望んでいない。

未来なんてものあの子にはなくて、
ただいつも綺麗な死に方をそっと静かに望んでいた。

でも＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「嫌です、そんなの」

どくんどくんと騒ぐ心臓。
それに呼応するようにあの子もどんどん近づいてくる。
ぴとり。その距離はゼロ距離に。あの子はトガの後ろからぎゅっと抱きしめるように言葉を続ける。

『ねぇ。約束して。ヒミコちゃんがもっと広い世界に出て、色んなものみて、色んな人と出会って、そのお話いつか私に聞かせてよ』

ふんわりと微笑んであの子はそっと腕を口元に差し出す。

トガが望んだようにソレが彼女の幸せなのだとしたらそれを否定することなんてできないから。
けどもし、この先が望めるのならその時はきっと＿＿＿。

「また会いましょう」『うん、また』

びしゃり。飛び散るあの子の匂い。かぶりついたあの子の味は甘くて優しくて、ほんの少し塩っぱい味がした。

「お〜い、トガちゃーん」

いつか貴方に会えた日はとっても素敵なお話をしましょう。だから貴方も私の話を楽しみに待っててください。

心做しか風がふわりと吹きつけた。

「トガちゃーん、海見つめてどうしたんだ？」

「なんでもありません」

「そうか？あ、そうそう。
死柄木がなんかおもしれぇもん見つけたって。クソつまらねぇやつ」

「んええ！？気になります」

彼女は笑い駆けていく。ただ今ある居場所へ向かって。

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