あの子は友達【トガヒミコ】 ページ7
「はぁ…はぁ…はぁ…」
＿＿＿同級生を切りつけ重症を負わせた 中学生は
逃走を続けており、現在もその捜査が続いています。
トガヒミコは1人ひたすら走っていた。
誰の目にも付かないように光の差さない道をこっそり。
『ヒミコちゃん』
突如背後から聞こえた声にどきんと心臓がなる。
ばっと後ろを振り向けば、屈託のない笑みを浮かべるあの子がいた。
「なんで……ｯ」
誰にもバレないように逃げたはずだったのに、
なんでまたこんな時にあの子は来てしまうのでしょう
『意地悪。誘ってくれてもいいのに』
春先の強い風が二人の間をかけぬける。
『私のこともつれてってよ』
奇妙な程に足音のないあの子はそっと近づいてくる。
「無理です」
『無理じゃないよ』
「無理です!!」
何度繰り返しただろう。
『言ったでしょ。私、存在を消すの得意なの』
だって、彼女は まるでそこに居ないかのように家でいつも過ごしていたから。
「貴方のことは……」
『ｼｯ』
喋ろうとしたトガの唇にそっと人差し指が当てられる。
静かになった空間に響く大人たちの足音。
『こっち』
あの子に手を引かれ、海が広がる砂浜まで連れられる。
砂浜であの子はキャッキャと遊んでいた。
『案外こういうとこの方が見つからないかも』
白いあの子の肌が波に反射してキラリと光る。
寄せては引いていく波があの子の影を歪ませる。
「貴方まで捕まりますよ」
まだ冷たい海に足元だけ浸かるあの子は変わらぬ笑顔で
こう告げた。
『ね、私を連れてっていいよ。ヒミコちゃん』
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
