貴方に送る愛言葉【ヒロアカ短編集】 (ページ6)

今日:6 hit、昨日:23 hit、合計:12,873 hit

② ページ6

『その家ね、夕方になるとオレンジ色の明かりがついて、私はいつもそこを通り掛かる度に羨ましいなぁって思ってた』

それはどんなに望んでも手に入らなかった普通の暮らし。

『私はね、いつも普通を見上げる側の人間なんだよ』

そんな彼女の言葉にホークスは目を開く

「そんなわけなか。Aちゃんが普通になっちゃいけないなんてそんなことなか！」

必死に伝えるが、彼女には届かない。

『荼毘君はね、私を引っ張り出してくれたの。
連合の皆を紹介してくれて、友達だってやっとできた』

孤独の中、縋ることができた唯一の手。それが彼だった。

窮屈な場所から連れ出してくれた彼
見知らぬ世界でたった1人の頼れる人
そんな彼を好きになるのは自然な流れ。

そうして作られた不自然な自然に彼女はのせられた。

けれど荼毘はそれで満足しなかった。
彼女がこちらをみればみるほど愛を口に出す程にどんどんと狂っていく。

「好きとか適当言ってんじゃねぇよ」

彼女の愛を受け取れず、酷く酷く彼女を拒絶する。
それでもAが縋れるのは彼しかいない。

酷く脆い異常な関係

「Aちゃん、俺じゃダメ？俺やったらそんな風に傷だらけにせん。お願いやけん、Aちゃん」

『ダメだよ』「なしてッ!!」

『だって、ホークスは幸せになれるでしょ？』

ひゅっと息が詰まるような感覚がした。
何を伝えても暖かく残酷に彼女はホークスの愛を否定する

『……荼毘くんは不安なんだよ。私と同じ。普通を見上げるしかできないの。だから一緒にいてあげないと』

それはまるで共依存だ。
いつか崩れていくような脆いもの

「そんなの」
『おかしいでしょ？』

酷く優しく彼女は笑う

『ね、普通じゃないの私』

そういって部屋を出た彼女の背中をじっと見つめる。
残されたのはただ無力感だけだった＿＿＿＿＿。