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幾度となく重なる唇にどんどん不安が募っていく
『ねぇ、やだ』「どうして？」
『だって、なんか怖いよ』
「大丈夫、すっごく気持ちいいから。
俺の好きをあげるためなんだ」
【好き】その文字に胸が震える。
確かに与えられた彼からの愛の言葉。
誰からも得ることのなかったその感情を。
彼が与えてくれた＿＿＿＿＿。
それだけで良かった。
言葉なんてもう要らなくて、ただ彼との愛を確かめ合うようにそっと唇に触れ合う。夢中になって、抱き合って、互いの温もりに触れ合って。ただただ孤独を埋めていくように。
「だから、怖がらないでよ」『……うん』
若く幼く愛を知らない2人。
目の前に確かな愛をただ求めて、
それが何を意味するかまだ知らない彼女の身体を貫いた。
身体を満たすように注がれる燈矢の愛を彼女は夢中になってうける。それがきっと、この心に足りなかったナニカなんだとそう信じて。
◇◇◇
ふと目を覚ませば隣に横たわる火傷の跡に塗れた男の姿。スヤスヤと眠る彼はまるで子供のように安心した顔で目を閉じていた。
『……ねぇ、荼毘くん』
寝ている彼から返事はない。
けれど、彼に向かって言葉を続ける
『私に理由をくれて、ありがとう』
熱い熱い山の中、私は1度彼を失った。
あの日、あなたの愛を受けた日。
あの日から、私はあなたのいない人生を生きられなくなった。生きる理由がなくなった。そう思っていた。
もう一度、あなたの声が聞こえた時この鼓動も蘇った。
あぁ、私は今日も生きれる。あなたの横で生きてていいのだと。そう言われた気がして。
幼い日のように愛を求め合って、形のないその愛を築き上げて。いつかきっと、この空白が埋められる日がくるのだと。その日を信じて、2人歩み続けた。
きっと、もうすぐその日はやってくる。
貴方の求めるその日は必ず。
どくん。どくん。どくん。どくん。
隣で眠る彼の鼓動の音がする。
それはまるで、暖かく心地がいい。
正しいことなんて何一つ私は分からないけれど、
この鼓動が、きっと生まれてきた理由になる。
『私燈矢くんのこと好き』
その言葉にパチリと目を開けた荼毘は笑いながら彼女の身体を愛で満たす。
「あぁ、俺も愛してる」
繋がって繋がって、不確かな愛を求め合う。
大人が教えてくれなかったコトを彼らは自分なりになぞっていって、彼らなりに築き上げる。
「てめぇの母親に感謝しなきゃなぁ。お前をうんでくれてありがとうってな」
彼はにっこり微笑んだ
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
