貴方に送る愛言葉【ヒロアカ短編集】 (ページ20)

今日:1 hit、昨日:33 hit、合計:12,901 hit

③ ページ20

あぁ、クソ。なんであいつだ。俺はなんのためにヒーローをやってる。なんであいつを救えなかった。なんでもっとはやく向かえなかった。どうしたらあいつは＿＿＿。

病室の地下、白い布に覆われたソイツの手を取ってらしくもなく叫んだ。
どうしようもない感情をただソイツにぶつけた
何をしたって帰ってはこないのに。

『ね、その幸せの中に私も含んでくれるかな？』

屈託のない笑顔でそういう彼女の顔が頭の中を過ぎる。
あぁくそ。なんでこんな時。
世界が幸せになったところで、世界を幸せにしたところでお前なしで何が幸せだ。

嗚咽が漏れる。
せき止められない感情がただただ溢れていった。

『ねぇ、ヒーローさん。このメッセージが届いた時、
貴方は後悔してるかもしれない。けどね私幸せだったよ』

流れていくエンドロール。
これが彼女の最初で最後の作品だった。

下らない夢なんてもつな。冷たいことさえ思った。
けれど、あぁ今なら思う。お前の話す台詞が俺を励ます。
お前は立派な役者をしていたってな。

「イレイザーぁ…
コレ、エキセントリックに良い映画じゃねぇか」

感動したのかズピズピと鼻水を啜るマイクをみてふと笑う。あぁお前こそ世界を幸せにしてるじゃねぇか。

「そりゃ俺の気に入りの映画だ、当然だろ」

「イレイザぁぁぁ」

「鼻水垂らしながら近づくな」

「しびぃなぁ、おまえ」

幽霊がいるなんて非現実的なことは思ってもいないが、
もし叶うなら俺は今度こそお前をちゃんと幸せにさせてくれ。

バシバシと泣いているマイクに背中を叩かれる相澤の顔はいつもより少しばかり優しい顔をしていた。