幸せにする仕事【相澤消太】 ページ18
「ん？こりゃなんだァ？」
酒を飲もうと無理くりに押しかけた相澤の部屋でプレゼントマイクはとある映画のDVDを発見した。
「天使が送るラブレター??」
棚の隅に隠しているだろうそういう系のDVDにしては、
想像もつかないタイトルにマイクは眉をぴくりとさせる。
「……あぁ。映画だ、古いな」
彼はどこか物憂げにふっと笑い答えた。
ほどよく酔った脳みそはそんか小さな憂いに気づかず、DVDをケースから取り出す。
「へぇ、イレイザーが映画とはねぇ。しかもDVDまで持ってるとはよっぽどの作品なんだろうよ」
映画に趣味もなければ、こうしてモノとして保管するのも珍しいからやはりそういう系なんじゃ？なんてそんなイタズラな想いからDVDを再生する。
『拝啓、私の好きな人。この手紙を読んでる時、きっと私はここに居ないでしょう。どれくらい貴方とすごせたか分からないけれど＿＿＿』
凛とした女優の声から始まるプロローグ。
それはどこまでも真っ直ぐで純愛な作品だった。
「マっサカ、ほんとに映画かよ…」
ぽかんとするマイクを他所に流れる映像を相澤はじっと見つめていた。よほど好きな作品なのか、はたまた＿＿＿。
「初めて見るだろ」
「あぁ、まぁ」
「マイナーだからな。
ちっぽけな映画館で数日だけやってたようなやつだ」
淡々と語る親友が見つめる先に居たのは映画の主演をやる女。語らずとも分かる。
ソイツは相澤にとって忘れられねぇ女なんだと。
『私の事幸せにしてくれるんでしょ？』
ベタなセリフにベタな芝居。
よっぽど古びれたマニアックな映画館でしか上映されないようなチープな作品。
「そいつの芝居がいいとか悪いとか
俺にはイマイチ分からん」
ヒーロー一筋で生きてきた彼にとって芝居など無縁だった。もちろんプレゼントマイクのように芸能もヒーローもと仕事をこなす奴は多かったが、
俺には向かないし興味はなかった。ただ＿＿＿
「いらっしゃいませ」
彼女との出会いはドラマのようなものとは違った。
仕事終わりに一杯でも。軽い気持ちで入った居酒屋。
俺は客で、ソイツはそこでバイトをしていた。
ただの店員。それだけだった。
だが、ソイツはじっとこっちを観察するように見つめてきて黙ってはいられなかった。
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
