�� ページ12
「お前、アイツのことどうするつもりでいんだ？」
同じく飲みに出かけたマイクと相澤。
マイクは酒を1口飲めば、そんなことを呟いた。
「…アイツって？」
「分かってる癖に聞くなよ」
分かっているからこそ相澤はその話題をしたくなかった。
マイクも別にわざわざ傷口を開こうなんて思ってはいない。ただこの状況でこのまま進んだとて誰も幸せにならないことくらい分かっている。
彼だって白雲の友人だったのだ。
彼らが幸せにならない道を進むことを見過ごせない。
「誤解しているなら言っておくが、
アイツが求めてるのは俺じゃないよ。」
ただ壊れそうでどうしようない時に隣に居たのが俺なだ
け。恋だの愛だのそんな単純な話じゃない。
「そうか？難しく考えすぎなんじゃねぇの？」
「お前が楽観的なだけだよ」
白雲朧の死は彼女にとって自分のヒーローの喪失だ。
あいつは彼女にとっての光であり目標だった。
誰よりも彼女を見ていたから分かる。
俺ではアイツの代わりになれやしない。
｢この際だからハッキリ言わせてもらうけどよ。
お前らは互いの首を絞めてるようにしかみえねぇよ。」
サングラスの奥、緑色の瞳とバッチリ合う
「いい加減、大人だろ。」
そう言って彼はぐびっとビールを喉に流し込んでは
「オカワリ」と陽気に喋る。
ガツンと言われたその言葉は家に帰っても尚、心に響いていた。
窓の外、見上げれば雨。
俺も彼女もあの日に取り残されたまま＿＿＿＿＿＿＿＿。
「昨夜、ヒーロー△△が重体で搬送され、そのまま病院で亡くなったことが判明しました。警察の調べによると＿＿」
テレビを付ければアナウンサーが悲しげにそんなニュースを読み上げる。それはとても哀しいニュースなのにどうしてか無性にモヤモヤしてしまう。
誰も知らない【ラウドクラウド】のその名前。
彼は確かに生きて。確かに守って。確かに死んだ。
彼が居なくても世界は簡単に回っていって、
何も無かったかのように毎日が過ぎていく。
ぐしゃぐしゃになりそうな正義の狭間、
ショータくんが居なければきっと。
けど、きっとこれは自分の傲慢だ。だから＿＿＿
『ショータくん、終わりにしよ』「……そうか」
驚きはしなかった。
何れ来ると思っていた日が今日だった。
ただ、それだけのこと。
元々彼女の世界を奪ったのは自分なのだから。
蝉がわんわん鳴いている中、過ぎ行く彼女の背中を見つめる。結局何も救えないまま、また夏が終わっていく。
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
