貴方に送る愛言葉【ヒロアカ短編集】 (ページ11)

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② ページ11

大切なものを無くした彼女は、今でもあの声が聞こえている。｢がんばれショータ｣｢負けるなショータ｣
あの日俺が聞いてたように。

そうしていくうちに彼女は白雲の死を拒絶するようになった。けれど、現実はいつも彼女を押し潰してくる。

『……ねぇ、ショータくん。お願い、全部忘れさせて』

｢いや、それは……｣

『お願い、しんどいの。』

潤んだ彼女の瞳に吸い込まれるように俺たちは禁断の戸を開けてしまった。彼女が壊れたのは俺のせいだから。
そうしてズルズルと沼の底の暗い場所へ2人で堕ちていく

【好きだ】

そんな言葉はあの雨の日に置いていった。
彼女にその想いを伝える権利など遺されていない。

「ねぇ、あんたも彼氏つくらないわけ？」

仕事終わり、ミッドナイトに誘われてAは飲み明かす。
やはり30代の女2人となれば当然そんな話にもなるわけで。

『そーゆーミッドナイトさんはどうなんですか？』

「あたしの話はいいのよ。ほら、イレイザーとはどうなの？いい感じだったじゃない」

【イレイザー】その言葉に反応してビールを飲んでいた彼女は思い切り咳き込む

｢あら、その反応は図星ってことじゃない｣
『いやいや、違います』

口が裂けても身体だけ繋がっていますなんていえなかった。私のワガママで彼に抱いてもらった日からズルズルと続くこの関係は恋愛に興味のない彼にとって合理的なもの

｢でも、あの頃は好きだったでしょ？｣

『……若さでどうにかなったあの頃と違いますし』

彼の笑顔を奪ってしまったのは私だ。
兄ではなく、あの日死んだのが私だったら良かったのに。

でも私はずるいからそんなことできなくて、
兄のいない世界で今日も息を吸う。
非合理な関係で彼の隣を保って本当に卑怯な人間。

｢私からすればイレイザーもあんたのこと好きだったと思ってたけど｣

『……そう、ですかね』

【好き】

そんな言葉はあの雨の日にかき消されてしまった。

「どーだよ似合うかよ！」

「なんでお前までゴーグル被せてくるんだよ」

「この先トリオでうっていくからな」

「え……」

いつだって私はそんな3人の後ろに引っ付いていて

『じゃ、私もはやく追いつくね』

「Aもはやく仮免とってインターン行って
そしたら最強4人組の完成だ!!!!」

心に棲みついた青い記憶の数々は
こんなに鮮明なのにそんな夢の続きはもうどこにもない。

③→←Lost of the Hero 【相澤消太】