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人間というのは不思議なもので
1番近くにいる人に何かと縋りたくなってしまう。
『本当はね、家に帰りたくないんだ』
ポツリと零した言葉は堰を切ったように出てくる。
母は私を嫌っていること
最低限の暮らしの中で生きていること
彼も事情は明かしてはくれなかったが、父親がヒーローだというのに1人こんな山で個性訓練に勤しむにはそれなりの理由があるのだと薄々は気づいていた。
これは誰からも真っ直ぐに愛されなかった2人が
彼らで築き上げた不確かな愛に溺れる話だ＿＿＿＿＿＿。
別にAが居てもいなくてもやることは変わらない。
個性の訓練をひたすらにして火力をあげて、
お父さんに認めてもらうだけ。それだけ。
けれど、なぜだかAといると安心した。
それはきっとあいつも満たされない何かを持っていたからかもしれない。
「ねぇ、燈矢くんお願いがあるんだけど」
山に行って秘密で個性の訓練をする毎日。
彼女は唐突にそんなことを言い出した。
「ん？何？」『…私の事叩いてみて』「は？」
冗談かと思った。
なぜそんな要求をするのか理解さえできない。
｢いや、でも｣『お願い』「それは…」
記憶にチラつくのは母親に手を上げるエンデヴァーの姿。
『私のためなの。ヒーローなんでしょ？』
それがどういう意味かは分からない。母親の愛を確かめるためなのか、暴力でしか心が満たされなかったのか。けれど彼女は酷く真剣にこちらを見つめていたのは確かで。
「…1回だけだからな」
頑なに強請ってくる彼女に負けてしぶしぶとそっと彼女の腿に触れる。
ぺちん。
『あれ？痛くない……』
｢そりゃ制服着てモコモコしてりゃそうなるだろ。｣
「わ、わかった…」
彼女はスカートを捲りあげる
「は、ちょっ」「これでどう？」
白く艶やかな肌がちらりと顔をのぞかせる。
その美しさにごくりと唾を飲み込む。
何かがギラつくような、そんな感情が込み上げる。
ばしん。音を立てて叩く
『いたっ!!』
彼女の白く柔らかい肌がほんのりと赤みを帯びる。
その痛みで潤んだ彼女の瞳がこちらに向けられる。
なんて酷く愛らしい。
もっとその表情が見て見たい。もっとその肌に触れてみたい。溢れ出る思いに再び腕をふりあげる。
ばしん。ばしん。ばしん。
その度に彼女は悲鳴をあげる。
『も、やめて燈矢くん！』「…ｯ」
ぐちゃぐちゃに泣いている彼女をみて、どうしようもなくなって、逃げるように家へ走しる。
ただ彼女は1人、暑い山の中に取り残された。
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作者名：SEI | 作成日時：2023年8月27日 1時
