夢遊 チョコラータside ページ19
またか…と、ため息をつく。ゆっくりだった歩みをはやめ、ソレを追いかける。
「待ちなさい」
前に立ち、声をかける。いつもの事ながら、返事はない。ただ虚ろな瞳で、こちらを見上げるだけ。きっとその目には、何も映っていないのだろうが。
これが初めて、という訳では無い。ここに来てから熱で眠り続けていた時以外、ずっと彼女は歩いている。
夜眠ってからすぐ、ふらふらと部屋を出てさまようのだ。
その度に部屋へ連れて帰るのが、わたしの日課になりつつある。
「帰るぞ、ニカイドウ」
手を掴み、自室へ導こうとする。
…が、なぜか今日は、動こうとしない。
……まったく、手のかかる奴だ。
虚ろな瞳に視線を合わせ、優しく声をかける。
「A…部屋に戻ろう。自室が嫌なら、私の部屋へ来るといい。甘いココアと、絵本を用意してある。…だから、おいで。A」
本来ならば、彼女と同じ状態にある人間に語り掛けても意味は無い。
だが彼女の場合、意識はなくともこちらの声は届くらしい。
数秒遅れてではあるが、彼女は小さくこくりと頷く。
「Brave ragazze,A…さぁ、行こうか」
もう一度その手を引いて歩き出せば、今度はふらふらと着いてくる。
いい子だ、A。ゆっくりおやすみ。
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馬刺し(プロフ) - 銀閣 萌奈華さん» えぇ、勿論です!私の作った子であると分かるようであれば問題はありません。描いていただけるなんて光栄です!詳しい設定はTwitterに記載してありますので、お手数ですがそちらをご確認ください。 (2020年2月29日 17時) (レス) id: e607740f63 (このIDを非表示/違反報告)
銀閣 萌奈華(プロフ) - 馬刺しさん» 私、イラスト集を作っているんですが、良ければ夢主ちゃんの絵描かせてもらっても良いですか? (2020年2月29日 17時) (レス) id: 0f825d67dc (このIDを非表示/違反報告)
馬刺し(プロフ) - 銀閣 萌奈華さん» ご存知でしたか!何度も検索をかけて、イタリアにある童話で出てきた作品だったので…そのお話を聞けて嬉しいです。コメントありがとうございます。 (2020年2月29日 7時) (レス) id: e607740f63 (このIDを非表示/違反報告)
銀閣 萌奈華(プロフ) - あ〜三つのオレンジ知ってる!お母さんイタリア人だから読み聞かせしてくれてたなぁ。懐かしい(*´-`) (2020年2月28日 23時) (レス) id: 0f825d67dc (このIDを非表示/違反報告)
馬刺し(プロフ) - いずもさん» ありがとうございます!原作もかっこいいですし、原作を軸にしたものも好きですが、やはり平和に、ほのぼのとした世界もいいですよね。 (2020年1月24日 6時) (レス) id: e607740f63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馬刺し | 作成日時:2020年1月16日 8時