恋の方程式.《Ryohei.A》

＃貴方の特別になりたい ページ28

．


先生はキョトンとした顔をしていた。




阿「……でも、Aさんは居残りなんてしなくても、もう大丈夫でしょ」


貴「……大丈夫じゃない！」




これからも2人で、居残りしたい。




私にだけ数学を教えてもらいたい。




この時間だけでいいから、私だけを瞳に映してもらいたい。








我儘、かな。








貴「……先生に、マンツーマンで教えてもらいたいんです、」





なんて言えば、





阿「じゃあ、中間先生に頼もっか？英語科だけど数学教えてたこともあるみたいだし、僕よりベテランだし……」






誰でもいいわけじゃない。


先生がいい、阿部先生がいいの。






貴「絶対に阿部先生じゃなきゃダメなんです！
先生以外は……、嫌だよ、」






私の気持ちが伝わったのか、私の目線に合わせて腰を曲げる先生。




高身長故に、辛そうだけど。






阿「……わかった！じゃあ、この教室の鍵はもうAさんの物ね！」


貴「へっ、？」






言ってる意味がすぐに理解できなかった。






阿「この教室は僕とAさんだけの、2人の居残り教室。いつでも、此処で待っててくれたらいいよ」


貴「……ほんとに？」


阿「ホントだよ、あ！お勉強以外のお話もしようね、約束だよ？」





と言えば、また明日ね、と小さく手を振ると先生は職員室の方向へ帰っていった。






手のひらに残る、第1講義室の鍵。





貴「……2人の居残り教室、か、」






2人の、2人だけの、





期待してもいいのかな。





少しでも貴方の特別に近づけているかな。






……でも、先生と生徒の関係に変わりはないんだ。






貴方をを困らせなくはないんだ。





貴「先生……すき、です」





小さく呟いて、手のひらにある鍵をぎゅっと握りしめた。

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