#プロローグ ページ1
.
出会いは突然だった。
街のはずれの丘に登った時のことだ。
中学を卒業する時に友達に言われたのだ。
丘の上にある桜の木がとても綺麗だと。
その話を聞いた時は興味なんて湧かなかった。
なのに、今日は何故だろう。
足はそちら側に向いて進んでいた。
やっとの思いで登りきった丘。
視線の先にあるのは大きな桜の木。
そこには先客がいた。
きっとずっと昔からあったのだろう。
そんな桜の木を見上げる男性。
柔らかな光がさす中、優しい風が吹き、桜が舞う。
その中で、桜を見て微笑む彼がとても綺麗で。
何故か桜ではなく、彼を見ていた。
「……桜、見に来たんですか」
「……」
突然、話しかけてきた彼に私は声も出ず、頷くだけ。
「そうなんですか、ここの桜は毎年綺麗に咲くんです」
言い終わらないうちに、彼はまた桜の木を見上げた。
私も同じように見上げる。
「綺麗……」
自然と出たこの言葉が、桜の木の事なのか。
それとも、視界の隅で微笑む彼の事なのか。
いまいち分からなかった。
「……あっ、桜の花びらついてる」
彼はそう言うと私の頭を指さす。
「えっ、ど、どこですか」
頭に手を伸ばす。
すると彼は私の手首を掴み、離さない。
「取ったら勿体ないよ。綺麗だから……」
身体が熱くなった気がした。
私のことじゃない。
きっと桜が綺麗なだけ。
でも、顔が熱くて仕方がない。
「知ってますか?」
「えっ」
彼はまた木を見上げると、話し始めた。
「この桜の木は綺麗だけじゃない。年に一度、願いを叶えてくれるんです」
クスッと笑うと、彼は私を見る。
「また、君と逢えますように」
綺麗な笑顔だった。
時間が止まった気さえした。
そう一言告げると、彼は去っていった。
桜の花びらのように儚く、すぐに消えてしまった彼。
これは夢なんじゃないか。
もう二度と会える訳が無い、そう感じてしまった。
普段ならこんな迷信、信じない。
でも、今日は信じてみたかった。
綺麗に笑う彼を、またこの桜の木の下で見たかった。
「……私も、彼にまた逢えますように」
桜の木の下、手を合わせ、小さく小さく呟いた。
これが私と貴方と始まり。
178人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rose(プロフ) - 進路は将来の大事な分岐点ですもんね。更新される日を楽しみに待っています。体調にお気を付けてください。 (2020年8月16日 16時) (レス) id: 0f6e3a02e5 (このIDを非表示/違反報告)
snowmanの姫 - この話好きなので寂しいです…(泣)更新まってますね!作者さん、体調に気をつけて頑張ってください。私は待ってますのでいつでも戻ってきてください。 (2020年8月9日 11時) (レス) id: ed717fdd1f (このIDを非表示/違反報告)
Ichika.(プロフ) - みおさん» コメントありがとうございます!まさか泣いていただけるとは思ってもいなかったので嬉しい限りです。これからもよろしくお願い致します(^ ^) (2020年7月4日 19時) (レス) id: dd85b0ee19 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 更新、頑張ってください! 序盤で涙腺崩壊しました。 いい作品なので、これからも頑張ってください。 (2020年6月21日 22時) (レス) id: 06505e05a5 (このIDを非表示/違反報告)
Ichika.(プロフ) - さややさん» コメントありがとうございます!嬉しいです(^^)学校が始まるとやはり毎日更新は難しくなると思うのでここぞとばかりに毎日更新しています!次回の更新もお楽しみに!これからもよろしくお願いします! (2020年5月21日 15時) (レス) id: dd85b0ee19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ichika. | 作成日時:2020年5月3日 23時