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Fside
それから数日後、アルバイトの宏光をお昼に送り終えた後、迎えに行く夕方まで何も予定がなかったから家でくつろいでいたら、突然スーパーから電話がかかってきた。
「はい、もしもし」
『あ、藤ヶ谷くん？無理だったらいいんだけどね、今から出勤できたりしないかな？』
その声の主は、宏光のお母さんの声だった。
「あ、暇なんで大丈夫ですよ。行きますね」
どうせ暇だったし、それなら宏光と一緒に帰られるしと思って、俺はすぐにスーパーへ向かった。
バックルームでエプロンをつけていると、急にごめんねと宏光のお母さんに話しかけられた。
「いや気にしないでください！ほんと暇だったんで」
「助かったわ〜宏光の分穴空いちゃって…」
「え、どういうことです？」
「さっき別のパートさんから、すごい具合悪そうですよって言われて、声掛けにいったらフラフラで。
本人は大丈夫って言うんだけど、一瞬私も抜けさせてもらって帰らせたの家に」
送った時は特にそんなことは感じなかったが、もしかしたら気が付けなかったのだろうか。
宏光の代わりに出勤してきたから、俺は夕方には帰られるが、宏光のお母さんは今日も閉店まで居なければならない。
また終わったら様子見に行きましょうか？と聞くと、じゃあお願いしようかなと言われ、帰宅前に俺は鍵を預かった。
バイト終わり、インターホンを押そうと思ったが寝ているかもしれないと鍵で家に入った。
一度だけ入ったことのある宏光の部屋をそっとノックする。扉を開けてみると、宏光はベッドに居たが目は開いていた。
「起こした？」
「…起きてた。わざわざごめん」
俺が来ることはお母さんから聞いていたみたいで、片付けようと思ったけど無理だったと謝られた。
「そんなのどうでもいいよ。大丈夫そうなら病院行こうと思ってたけど、起きるのしんどい？」
「…ちょっとだるいかも」
「そっか。じゃあとりあえずやめとこう」
前に一度看病に来た時も、片付けていないと言われていたが、その時よりも今回の方がはるかに部屋は正直荒れていた。
片付けていないというよりも、そんなことに手が回っていない感じがした。
「たいすけ…」
「ん？どうした」
控えめに、起こしてと手を伸ばされた。大丈夫？と確認してから背中を支えて体を起こすと、そのまま抱き付かれた。
ギュッと力が込められていた。嫌なほど疲れや不安が伝わってきた。俺はただ背中を摩った。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
