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Fside
「…痩せたね」
「んー」
そんなにお腹が空いてないと、らしくないことを言う宏光に一応ご飯は用意したが、本当に食欲がないようで食べて欲しい気持ちもあるが無理を強いるのはやめた。
そのあと一緒にベッドに入って、宏光を後ろから抱きしめると明らかに華奢になっていた。お風呂でも気付いていたけれど。
「言ってよこれからは。何かあったらすぐに」
「…うん」
「ちょっと、本当にうんって思ってる？」
抱きしめながら顔を覗き込むと、笑いながら思ってるよと言われた。
こっち向いてと頬を触ると、宏光がゆっくりと振り返った。頭を撫でると照れくさそうに笑う。微笑み返すと、どちらともなくキスをした。
少し耳たぶを触ると、宏光が俺の腰に手を回した。緩く脚も絡められて、そうすると舌も絡んでゆく。
「シたくなるから。おわり」
「…え、シないの？」
まるでなんでもないことを聞くかのように、宏光は目を丸めた。
いや、だって…と、俺が困る。今日は普通にそんなことにならないと思っていたから。
「大丈夫だよ」
少しイタズラな笑みを浮かべた宏光が、跨がれと言うように俺の腕を引っ張った。
俺の下に入った宏光が、首元に腕を回す。
やっぱり、俺にとって宏光は男らしい。こうして、なんだかんだ引っ張られているのは俺だ。
大丈夫だよって、安心させられる立場じゃ今はダメなのに。
その分俺は、不安な気持ちをかき消せるよう、たくさん宏光を愛した。
「…たいすけ」
「ん？」
行為を終えて、少しぐったりした宏光が俺の胸に顔を埋める。
「ありがとう」
俺は精一杯抱きしめた。必ず俺が傍で守ろうと心から思った。
抱きしめたまま眠っていたつもりではいたが、寝相の良くない宏光は朝になると余裕で腕から脱出していた。
起こさないようにそっとベッドから出て、宏光に布団を掛け直しシャワーを浴びた。
「あ、おきた？おはよう」
「ん…はよ」
ベッドのそばに腰を下ろし、まだ寝転んだままぽけーっとしている宏光の頭を撫でる。
「また寝そうだわ…」
「寝たらいいじゃん」
「んーもったいないから起きる」
「もったいない？」
「せっかく太輔といるのに起きないと時間がもったいないだろー」
寝起きだと少し素直な宏光が、そう言い残してシャワーへ向かった。
怖い思いをさせた奴に同感したいわけではないが、こんな可愛い人狙いたくもなるよな…と、逆に今まで無事だったことが奇跡なんじゃないかと感じる。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
