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Fside
「…ごめんね、太輔。時間奪って」
「ううん。そんなの気にしないで」
オジサンが帰り、2人になった部屋で宏光が謝った。
落ち込んだ様子で、脚の上で握っている手を上から握る。
微かに震えているのを感じて、物凄く腹が立った。俺の恋人に怖い思いなんてさせやがって、あのジジイ。
「ここ会社だよ」
「うん、わかってるよ」
構わず抱きしめて、背中をさすった。
営業が上手いとか、愛嬌があるのは大切なことだけれど…宏光はあまりにも可愛いすぎるのだ。
いつ襲われるか怖くて、それはそれは困る。
「もー大丈夫。来てくれてありがとう」
「ううん、連絡してくれてありがとう。どこからでも連絡してね、絶対何とかするから」
「んはは。俺のヒーローだあ」
そう言って笑う宏光も、また可愛い。あざとい。
堪らなく襲いたくなって、あのジジイも俺も変わらないじゃんと嫌になる。
「今日は、どこか美味しいものでも食べに行こうか？？」
「んー…それもいいけど、家で太輔とゆっくり食べたいな」
「じゃあそうしよう」
嬉しそうに笑う宏光の頭を撫でる。
あぁ、早く家に帰りたい。
・
2人とも残業をせずに一緒に帰って、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入り、一緒にベッドへと入った。
キスをすると、宏光が眠そうな顔で微笑みながら、布団の中で手を繋いだ。
「疲れたでしょ」
「ううん。大丈夫」
手が背中に回ると、抱きつかれて胸に顔が埋まる。
お風呂上がりでシャンプーの香りが漂う髪を優しく撫でた。
「疲れたって言っていいんだよ」
「…ちょっと、つかれた」
「頑張ったね」
「たいすけも」
宏光が顔を上げて見つめてきた。
いつもなら宏光からキスしてくれるまで待ったりもするが、今日は甘やかしてやりたいからすぐキスをしてあげた。
「……もっと、」
「もっと？」
「ん…」
眠いからか疲れているからか、いつもより少し素直で…。
「かわいい、ひろみつ」
「かわいくないー」
「かわいいんだよ宏光はぁ…困るくらい」
「えーなにそれ」
またいつもみたいに苦しいと言われるほど抱きしめる。
愛おしくて仕方ない。ほんとはずっとここに閉じ込めたい。
「もーずっと俺のところいてよー」
「んはは、もういるのにぃ？？」
そういうことじゃないと言いたかったが、そんなのどうでもいいくらい、俺の恋人は可愛い。
END 2023/04/15
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
