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Fside
「面倒なんて思わないし、面倒な北山でも好きだよって、前言ったじゃん」
「でも………」
「我慢される方が嫌」
顔も合わせて少し強めに言うとやっと北山は口を開いた。
昔共演した女優さんと裏で盛り上がってるのを見ただけで不安になってしまったと。
「疑ってるわけじゃない…何もないってわかってるのに…」
「うん。信じてくれてることは分かってる。分かってるから、なんでも言って。これからは」
じゃあ…と一度俯いた北山が、そっと俺の顔を見る。なに？と優しく問いかけると。
「すき…って、言って」
「好き。好きだよ北山。北山しか好きじゃない」
そうしてその晩、もう分かったからと言わせるまで、俺はたくさん好きと伝えた。
「ふじがや」
「ん？」
甘い夜の後、珍しく北山が後ろからピッタリと抱きついてくる。
「なに？どうしたの」
「なんで、ずっと会いに来てくれなかったの」
「なんでって(笑)あなたが断るからでしょう」
「それでも来いよ、ばか」
「だから今日来たでしょ」
「ちょっと、おそい」
普通なら、こんな理不尽なことを恋人に言われたら腹が立つものなだろうか。
そんな感覚も、もう忘れた。
忘れるくらい君が
「好きだよ」
「もーわかった」
「北山が言えって言った！」
「何回もいらない！！」
「もー、難しいなあ北山さんは」
難しくねえしと俺の体を揺さぶる北山を、今度は正面から抱きしめる。
「もう足りたの？」
「…ううん、足りない」
END 2023/04/08
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
