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Kside
「ねぇ、きみさ」
「…へ?」
レジを打っていると、頭上からそんな声が聞こえて顔を上げる。すると思ったより距離が近くて、少し後ずさる。
クレームだろうか。別に態度悪くした覚えはないけど…。
「男の子と付き合ってるの?」
「…はっ?!」
男が面白そうにニタニタと笑う。
俺の声は思っているより大きかったのか、次に並んでいたお客さんも、隣のレジのパートさんも驚いた顔でこちらを見ていた。
冷静になって、スミマセンと軽く頭を下げる。
「可愛い顔してるもんね」
「ちょ、な、何言ってんすかー…あはは…」
何とか話を流して、さっさとレジを済ます。
その客は、またねなんて言ってレジを去っていった。
また…って。
というか、何でバレてるんだ?たまたまどこかで見られた?いや…でも外で変なことしないし。
ただ太輔と外出かけてたところを見られたくらいじゃ、付き合ってるとは思われないはず。
いやー…もしかして帰り道?
偶然見られたのは俺らが悪いとして…それをわざわざ言ってくるなんて、少し気味が悪い。
しかし、色んな変な奴がいるもんだよなぁと軽く流し、その時は気にしないようにした。
何となくだが、見覚えがある客だった。
でもこれといった記憶はない。しかし、来たことはあるのだろう。まぁ、俺を外で見て気付くということはそういうことだから当たり前だが。
「んー」
スッキリしないまま休憩に入り、おにぎりを食べながら考える。太輔に言うべきだろうか、と。同じ場所で働いているのだから、太輔の顔も覚えていておかしくない。
「あ、」
そうだ、太輔!
あいつ、太輔に電話で話した客だ。高校生?って聞いてきた奴。
ということは…あの帰り道より前に俺のことを目につけていて、そこからあの場面を見られたのだとしたら…。
太輔には、全て話していなかったが、実はあのあと色んな個人情報を聞かれていた。
北山という名札を見て、下の名前は何て言うの?と聞かれた後に、高校生かと言われて。大学生だと返すと、どこの大学なの?大学には何曜に行ってるの?だとか。
もし自分が女だったら怖かったが、男だし…と。
ただの雑談のテンションだろうと思って、そこまで気にしていなかった。
しかし、今思い返せば少し寒気がする。
時系列的に…本当にたまたま見られたか?つけられてる?
「…いやいやいやいや、まさか、ね」
男だし、俺。
なんて思いながら、ちょっと気分が悪くておにぎりを半分残した。
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作者名:櫻弓 想 | 作成日時:2023年2月12日 23時