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Tside
収録は、きっと誰も気付かないほどに、いつも通りのミツだった。
というより、いつもより張り切ってた。
具合が悪い時のテンションで誤魔化す癖。
それで悪化するという悪循環。
「みつーほら、こっち着替えて」
「んぇ?」
「着替えたら、これ飲んで」
こんなことを予想済みだった俺は、着替えを持ってきていた。
汗かいてた服に着替えたら、さらに風邪引くでしょ。
そして行きしにスポーツドリンクと冷えピタも買ってきておいた。
「たまちゃんお世話慣れてるね」
「ほんと、慣らさないでよね」
着替え終わって、そう言ってきたミツに冷えピタを貼った。感心してる場合じゃないっての。
「はー体力あったのにな、年かな」
「きっと、ずっと無理してきたからだよ」
「…ごめんね、いつも」
「謝らなくていいけど」
帰るよと言うと、ちょっと待ってと止められる。
この場に及んでなんだ。帰ることより大切なことなんてない。
「仲良いスタッフさんに借りてた本、持ってきたの。
返してくる」
「バカ、今度でいいでしょ。早く帰ろう」
「ダメ、すぐ返す」
「じゃあ代わりに俺が」
「そんなのだめ。失礼だよ」
ミツがペリッと冷えピタを剥がして、俺に手を出させると、あとでまた貼るからと言って、粘着部分がつかないように手のひらに置かれる。
そのままバタバタ出て行ってしまった。
冷えピタを見つめ思わずため息を吐く。
どうしようもないから手を前に出したまま一度座ると、メンバーが苦笑いで俺を見る。
「手のかかる恋人だね」
「手がかかるのはいいけど…無理すんなって何度言っても分かってくんない」
「まーそれがミツって生き物よ」
そこから結構待った。
どうせ本の感想でも語ってるんだろう。
ほんとお人好しなんだから…。
じゃお疲れーと、ドアを開けたガヤが
「わ!!」と大きな声を上げた。
同時に「ごめんたま…」と甘えた声が聞こえる。
見ると、ミツがガヤに完全に支えられていた。
楽屋に着いたところで力尽きたのだろう。
ドアを開けるタイミングが合うなんて、こんなところでシンメ出さないでよね。
「たまはこっち!!バカみつ!」
手のひらに置いてた冷えピタを少し勢いよく貼り
有無は言わさず無理やり抱えて帰った。
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ちび(プロフ) - めっちゃ良いですね、藤北、から検索で来ました、ツイッターもリクエストさせてもらいました⚪︎何気ない藤北、めっちゃ好きなんです、ドラマのは私も妄想してたんでめっちゃ読んでてニヤニヤしちゃいましたわ🤭素晴らしいですね (2023年3月16日 13時) (レス) @page33 id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻弓 想 | 作成日時:2023年1月15日 21時