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「かんぱ〜い」
小さくジョッキをぶつけ、ビールをあおる。
「ぷはぁ。んまいー」
「深澤もすっかりオヤジだね笑」
「いい歳の取り方してるだろ？笑 Aも今日は酔い潰れちゃっても大丈夫だから気にしないで飲みなさい！」
「は？」
「俺と飲む時はAが酔い潰れても俺が家まで送るから。他の男の時はダメだからね。係長と飲む時もちゃんとセーブしろよ」
メニューを見ながらしれっと言う。
もう我慢できない。
『どうしてそんなに思わせぶりなことばっかり言うの？』
そんな言葉を、投げかけてやろうと思ったその時、
「Aに、話したいことあるって言ったじゃん？」
ふいに深澤が話し始める。
「うん。。」
「あれ、話したいことっていうか、聞きたいことだったんだけど、」
「うん」
「てか、もうすでに一回聞いてみたこともあるんだけど、」
深澤にしては全くもって歯切れが悪い。
「なに？」
「あー。。。あの。。俺が名古屋行く前さ。。急に俺と距離おいたよね？あれ、なんでかなって」
「あ。。」
そうだ。
前にも聞かれたことがあった。
一緒に買い物に行った帰りの電車で。。。
深澤、あの時、見たことない表情してた。
そうだ。その時と、同じ顔が目の前にある。
いつも余裕がある感じの深澤が、
なんかちょっと、
寂しそうな。。。。
すがるような顔。
「ね、なんで？俺、あの時、Aになんかしたかなぁ？名古屋行ってもずっと気になってた」
今すぐ抱きしめてあげたくなるような感情にとらわれる。
「。。。あー。。。深澤は。。別に何もしてないよ。なんというか、わたしの気持ちの問題？」
「急に俺とは、いたくなくなったって気持ち？」
「違う違う！。。。。その頃、深澤のこと好きな子って何人かいて、その子たちの気持ちに負けちゃったというか。。自分に勇気がなかっただけ」
「。。。わっかんねぇ笑 でも俺のことイヤになったわけじゃなかったってこと？」
「。。。うん、そう。。」
「そっか。。」
「。。。。」
「。。。。」
沈黙が、5分にも10分にも思えた。
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作者名：しろ
| 作成日時：2022年10月7日 22時
