�� Erina side ページ24
「深澤さん、この資料、課長が事前に読んでおいて欲しいとのことでした。あと10分ほどで帰ってくるみたいです。お待たせしてすいません」
「あ〜浅木さん、ありがとうございます。待つのは全然。気にしないで笑」
「あのー。。深澤さん。。あのー。。わたしと。。LINEの交換なんて、どうですか？」
「あぁ。。でも今、会社のケータイしか持ってないんですよ。ごめんなさい笑」
深澤さんがうちの会社に来るようになって１年。
来るたびにせっせとお茶を出して、たいした用もないのに話しかけて。
わたし的には一世一代の勇気を振り絞ってLINE交換のお願いをしたつもりだったけど。
体よく断られた。
怖くて聞いてないけど、やっぱり彼女がいるのかな。。。
お仕事の時はキリッとするけど、商談が終わるととっても柔らかい雰囲気で。
女性事務員にも気さくに話しかけてくれる優しい人。
それであの顔だから、うちの社員の中にもファンが多い。
そのいちファンにすぎない存在から抜け出したくて、
深澤さんに、意識して欲しくて、
できれば彼女になりたくて、
やっと言ってみたのに。。
そのあと、諦めきれないわたしが何度も彼を誘い、やっとふたりでの食事を了承してくれた。
「。。。深澤さん。。あの、わかってると思うんですけど。。好きです。お付き合いしてくれませんか？」
「ごめんね。俺、東京に好きな人がいるんだ」
「彼女ですか？」
「いや、あっちは俺のこと全然。最終的には会ってもくれなくなった」
「。。。じゃ、お試しでもいいです！」
「は？」
「わたしと付き合ってみて！わたし、その人を忘れさせてあげるから」
「何言ってんの。お試しって、そんなのダメでしょ」
「わたしがいいって言ってるの。わたしのこと、好きにさせてみせるよ」
「すごい自信だな笑」
そのあとどんどん強引に話を進めて、
「お試しの彼女」の座についたわたし。
「絵里奈ちゃんて面白い子だね笑」
最後には辰哉が白旗を振った。
わたしはとにかく、なんでもいいから、この人の隣にいる女性になりたかった。
その時は無我夢中で。
あとから考えたらなんて事言っちゃったんだと思ったけど、
でもそれから辰哉は、わたしをちゃんと彼女として扱ってくれて、
誰かに聞かれた時もちゃんと彼女だと、紹介してくれた。
忙しい中でも会う時間は作ってくれたし、優しくて、面白くて、かっこよくて、とにかく自慢の彼氏だった。
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作者名：しろ
| 作成日時：2022年10月7日 22時
