�� ページ23
わたしは、何を言われてるんだろう。
予想していたこととはあまりに違うことを言われて、頭の中が整理できない。
彼女の口調には、言っていることが訳のわからないことでも、なんだかそれを正当化させてしまうような迫力があった。
。。。でも、
脳裏に、深澤の顔が浮かんだ。
「。。。浅木さんの、深澤を思う気持ちは十分わかりました」
彼女の表情が一瞬緩む。
「でも、深澤の気持ちは、本人にしか動かせないと思います」
黙ってわたしをみつめる彼女。
「。。。あとひとつ、浅木さんに言っておかなきゃいけないことがあります」
これを言っておかないと、フェアじゃない気がする。
「わたしは深澤が好きです」
「。。え。。」
「彼が名古屋に行く前から」
彼女は、心底意外そうな顔をした。
「でも、名古屋から帰ってきた深澤にはあなたがいた。だから、なんていうか、割って入るとか、そういう気はなかったです。好きな気持ちは変えられないから、ずっと心に持っていようと思ってただけで」
「なぜ。。名古屋に来る前にふたりは付き合わなかったんですか。。？」
「そもそも、深澤がわたしのことを好きかどうかがわかりませんが、わたしに勇気がなかったのは確かです。だから東京と名古屋で離れてしまったあと、なんだか心が荒んでいきました」
しっかりと彼女の目を見る。
「。。。だから、浅木さんの頼みを聞くことは、わたしの気持ち的にもできないんです」
「。。。わたしは。。誰に何を言ってたんでしょうか。。」
彼女は自嘲の笑みを浮かべる。
「彼を取り戻すはずが。。。彼とあなたがお互いを想い合ってることを知ってしまっただけなんて。。。」
彼女から伝えられる言葉は、わたしにとって信じがたく、すぐには素直に受け取れない状況だった。
「。。。さっきはAさんに伝えたいことだけを言うためにほとんどお話しませんでしたけど。。。実はわたしと辰哉の始まりから、ずっとAさんの存在は知っていました」
彼女は、今まで手をつけていなかったコーヒーを初めてひと口飲むと、わたしに話を始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 687人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろ
| 作成日時：2022年10月7日 22時
