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夕方になるにつれ熱が上がってきたような気がして、定時で帰り支度を始める。
「もうあがるの？」
気がつくと帰る準備万端の深澤が立っていた。
「あ、あぁ。。うん」
「一緒に帰ろーぜ」
「。。。うん。。」
やだな。
なんか気まずい。。
エレベーターを降り、会社を出るとびゅっと風が吹き付ける。
ビル街の間を抜ける冷たい風に思わず体をすくめる。
寒い。。
やば、やっぱ熱上がってるな。。
「寒い？」
「え？。。いや、別に」
「ウソだろ」
「え？」
「お前、体調悪いくせに。なんで強がるんだよ」
「なに言って、「Aの顔みりゃわかんの。昼もロクに食ってなかったしな」
「。。。。。。」
「マフラー、俺のも巻く？」
「いいっ！」
優しさが沁みすぎて、逆に頭に来て、言葉が強くなる。
可愛くない女とわかっていてもなんだか憎らしくて、そんな反応になってしまう。
駅に着くと帰宅ラッシュ直前で人が多い。
電車も当然座れるわけはなく、ドアに寄りかかって体の気だるさを誤魔化していると、
「A熱ある？かなり寒そうだな。ホントにこれ
巻けよ」
寒さで無意識に両腕をさすっていたようで、それに気づいた深澤が自分のマフラーをわたしに巻こうとする。
「ほんとに、大丈夫だから」
マフラーを返して彼から視線を外し、窓の外を見る。
すると、ぐいっとおでこに強引に入り込んでくる手。
「。。。やっぱ熱あんじゃん。。」
「そんなことない」
「お前が嫌がっても送るからな」
「は？」
「心配だから。ひとりで帰すわけにはいかないでしょ」
「ひとりで帰れます」
「絶対だめ。途中でぶっ倒れたらどうすんの」
「。。。。」
「タクシー乗ろう」
駅を降りるとすぐに深澤が言う。
「そんな遠くないし、買い物して帰りたい」
「熱出た時ってどんなもの必要だっけ。。まぁ俺があとで買い物行ってきてやるからAは大人しく真っ直ぐ家帰れ」
無理矢理タクシーに押し込められる。
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作者名：しろ
| 作成日時：2022年10月7日 22時
