ラブストーリーは甘くない《紫》 (ページ11)

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「今日はありがとうな。助かった」

あとひと駅でわたしの降りる駅、ということころで深澤が口を開く。

「うん。なんか色々決めてばっかりの一日だった笑」

「あ〜これで俺の部屋、A好みの部屋になっちゃうな〜」

「。。。大丈夫。わたしの好みというより深澤をイメージしてジジくさいチョイスにしたから」

「なんでそうなるんだよ！笑」

わたし好みの部屋になっちゃっていいの？

そんな言葉は飲み込んだ。

「Aさぁ〜。。」

わたしの降りる駅のアナウンスが聞こえる。

「ん？」

「俺が名古屋行く前、急によそよそしくなったよな？あれ、なんで？」

「え、」

急な問いかけに、目が泳ぐ。

自分がどんな顔をしてるかなんてわからない。
でも、目の前の彼は見たことがない表情をしていた。

言葉を探していると、電車が駅に着き、ドアが開いた。

「あ、」

「あぁ、なんでもない。行って。今日はホントありがとな」

「う、うん。。」

プシュっとドアが閉まり、ホームから電車内を見ると、座っている深澤と目が合う。

にこっと笑ってひらひらと手を振る顔は、いつもと同じ表情に戻っていた。

夕暮れ時の商店街を抜けて、マンションへ戻る。

夕飯の買い物をして帰ろうと思っていたのに、何も考えられず、ただただ、さっき見た深澤の顔を思い出していた。