青い春を駆ける【稲荷崎】 (ページ9)

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第７話ページ9

黒須「夏目、そんなんわかるんか！すごいな～。お前、バレーやってへん言うてたよな？」

『やったことはないのですが、実は幼馴染みがやっていて、よく横から見ていたんです』

黒須「そっかあ！すごいなぁ！お前そういや中学優里西やったもんな！」

まさかの監督からのカミングアウトに俺と治は目を丸くした。

治「お前優里西なん！？」

角名「あの強豪の！？」

『強豪…？私は、その頃はあまりバレーを見ていなかったのですが、幼馴染みはよく大変だとおっしゃってました』

治「マネやったわけちゃうんか」

『はい！その頃は家のお手伝いを…』

角名「へえ…そういや長野から越してきたんだっけ」

『はいっ』

会話がひと段落ついた後、しばらくしてAが監督が思いついたと手を叩いた。

黒須「次から相手の分析とか始めてみるか！」

『え！？ぶ、分析！？そ、そそそ、それは大層なものでは…！』

治「落ち着け。普通や普通。監督らと話し合いながらあっちの戦略とかを見抜いたり、弱点見たりするだけやって」

角名「それって普通に大役じゃん」

俺が笑いながら返すと、更にAは動揺して首をブンブンと横に振る。

治はそれを見て、見たことないくらい優しい顔で安心させる様に言った。

治「お前やから、できるって」

根拠のない言葉かもしれない。でも、Aの心には届いたみたいで。

目を何度か瞬かせた後、決意を固めた表情で、いつもよりもハッキリとした声で。

『はいっ、がんばりまひゅっ！』
　

角名「ブッ」

治「お前ええとこで噛むな」

黒須「まあ何はともあれ！頼むで！夏目！」

こうして後に大会で次々と叫ばれる『勝利の女神』を生み出した瞬間だ。

_______シャットアウトー！！今回も読んでいたかの様なブロック！》

《ええ、やはり彼女の読みが怖いですねー》

《勝利の女神は稲荷崎に居り！！》

あいつがそう呼ばれる様になったのは、紛れもなく俺達をインターハイ３位まで押し上げた、一年の夏だったと思う。