青い春を駆ける【稲荷崎】 (ページ7)

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第５話ページ7

ツムの話も程々に、先ほどまでの会話を思い出した。

治「あっせや！ハンカチやんな！自分、桜の木の下にこれ落としてったやろ！」

ポケットから無造作に取り出した白のハンカチを見るなり顔を輝かせる。

『これ！これです！ありがとうございます！！！』

静かで暗かった顔を精一杯綻ばせて笑う。

俺がそれに笑い返すと横のツムが俺の背中を思い切り叩いた。

治「…いっ！？」

侑「よ、良かったな！ネコババばれんくて！」

治「はぁ？ちゃうわ！適当言うなアホ！」

『これ、大切なものだったんです…本当に一時はどうなるかって…お二人のおかげです！

ありがとうございましたっ』

その感謝の言葉と笑顔に掴み合っていた俺たちでさえ止まる。

侑「見つかって良かったな」

治「もう落としたらあかんで」

『はいっ！もう落としませんっ』

この天使の様な微笑みに、俺は。

…いや良く知っているからわかる

俺たちは一瞬で恋に落ちたと断言できる。

治「名前は？」

侑「何組？」

だってそう言った言葉が重なったから。

『１年３組夏目Aですお二人のお名前をお聞きしても…』

治「１年２組！宮治！」

侑「１年４組！宮侑！」

食い気味に答えた俺たちに驚きながらも、また楽しそうに笑い出す。

『ふふっ治くんと侑くんですねまたお会いできたらお話ししてください』

侑「いや、別にいつでも話したるし！」

治「せや！バレー部入ってや！」

侑「えっお前名案やな最高やん。バレー部入ってマネやったらええやん！」

治「先輩らが今ちょうど探してんねん！マネ！」

あん時は「どっちでもいい」って答えたけど、お前がおった方がいいに決まっとる。
不純かもしれんけど、こいつを繋ぎ止める何かが欲しかった。

『え！？で、でもバレー経験者では無…』

「「教えたるから！」」

こうして半分無理矢理部活に連れ込んだ。

今思い返せば強引にも程があるけど、あの時はああやって正解なんやと思う。

後にAは、稲荷崎の重要な戦力の一つになるんやから。

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序章終了。