第２３話 ページ25
星海「俺さ、お前とずっと話したかったんだよ」
珍しく大人しい物言いに違和感を覚える。
火が傾いてきて夏とは言え夕方の風は少し冷える。
星海「俺、お前のそばに絶対1番いたのになんもしてやれなくてさ。
お前のおばさんが、死んだ時もなんもしてやれなくて、なあなあになってるうちに引っ越してさ。
俺なんも知らねえのに、お前が遠く行って、
正直、寂しかった」
思いがけないカミングアウトに言葉が詰まる。
自分の母親が死んだこと。
すぐに親戚に引き取られたこと。
それが知らない土地だったこと。
『ごめんなさい光ちゃん…！
私も、言わなきゃ行けないと思っていたのですが、バタバタしていて、よくわからないうちに話が進んでいて…！
一緒に高校に行こうって約束したのに、破って消えて、なにから謝ればいいのやら…』
あのハンカチを入学式でなくした時Aはこれ以上ないほどに焦った。
あれは唯一のAの母親の形見だったのだから。
でもそれを見つけて、自分をバレーボール部へと導いてくれた。あの双子がAの世界をどんどん変えていった。
星海「わかってるよ」
思い詰めるAに優しく笑う。
顔をゆっくりと上げた彼女の頭を豪快に撫でると、いつもの元気な声色で言った。
星海「俺は、あん時はまだガキだったから励ましの言葉もやれなかったけど、今お前がバレーに関わってくれて嬉しい。
俺達は同じ道は歩んでなくても、きっとどこかで会える。
幼馴染っつーもんは、簡単に縁が切れたりしねえよ」
心の広い優しい言葉に、Aの目に涙が浮かんだ。
星海がそれを指で拭う。
星海「その泣き虫は直せよ」
『ズビッ…ずびばぜんっ…ありがとうございまひゅっ…が、がんばりまずっ…』
星海「おう。俺も頑張る。そしたらお前を迎えに行くから覚悟しとけよ」
『…へ？』
呆けた顔をした後、ズビッと鼻水を啜る姿は色気など皆無。
星海は驚いた顔をして、のけぞった。
星海「おい！お前！俺があんだけ露骨なのに気づいてねえのか！？」
『露骨…？なんの話ですか…？』
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作者名：さくさくぱんだ | 作成日時：2020年6月1日 13時
