第1話 ページ3
入学式の日一際目を引く女子生徒がいた。
桜の木下に立って桜を眺めている。
長い髪が風に靡いてまるで桜に攫われてしまいそうな儚い雰囲気。
強い風が吹いて桜が一気に飛ぶ。
校庭の砂が舞い上がって強く目を瞑ると、次に目を開けた時には彼女はいなくて。
桜を見つめる横顔だけが頭の中に鮮明に残っていた。
入学式の後、俺らは部活があるから二人で一目散に体育館へ向かった。
部活の休憩時間、サムが片手でボールをいじくりながらポツリと呟いた。
治「可愛い子おったな結構」
侑「俺のクラスも数人おったけど…でも妖精みたいな子おったよな」
治「妖精?アホちゃう」
侑「ほんまやって!桜の木の下に!」
治「…へー…」
侑「可哀想な目で見るな!!!ほんまやなんやって!お前見たらおんなじこと言うからな!」
治「アホくさ…」
そん時は全くサムは信じてくれへんかった。
むしろそんなことより晩飯の話を始めて、俺もすぐに今日の練習についての話題へと切り替えた。
強豪校に入ってから数日、レベルの高い選手の中で練習できるのは俺にとってこれ以上ないほどに幸せなことや。
この横のボヘっとしたドアホはどう思てるかわからへんけどな。
治「おい声に出てんぞ。しばいたろかボケ。アホはどっちや」
侑「あ"ぁ!?お前のそのぼーっとした面にサーブぶち込んだろか!」
治「は?上等じゃボケ。やってや…」
北「今練習中やけど、そんなことしていいと思っとるんか?なあ」
「「す、すんません…」」
敵わへん先輩もおるけどな…。
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作者名:さくさくぱんだ | 作成日時:2020年6月1日 13時