続 先代のNo. 1リベロは

五十九話 ページ10

さっきスパイクがアウトになったからというもの、じわじわと小さなミスが出始めてきた。

力み過ぎというわけじゃないけど、焦り……とも違うな、なんて言えば良いのか…

…なんかリズムが狂ってて空回りしてる、

例えるなら自転車のペダルを凄く漕ぎ過ぎて漕いだ感覚を感じなくなるみたいな…？

そんな感じ。


でも完全に崩れて呑まれたわけじゃないから、すぐに立て直せるとは思うんだよなぁ。

ただその立て直す隙を突かれて一気に崩れるかもしれないんだけども。


これはもう少し見ないと具体案が出せないな……と思っていると、

「A」

監督に呼ばれました。



なんで呼ばれたのかな、俺の意見出しならタイムアウト取れば良いのに、物理的にも流れが切れるのに取らずに俺を呼んだし…。

不思議に思いながら手招きに従って側まで行くとこう言われた。

「この状態、Aはどない出来る？」

「！」


ーーー俺なら。


…控えに入ってる以上試合に出る可能性はある。

それはわかっているけれども、こういう風な言われ方をされると……。

「……まるで切り札みたいな言われようですね、俺」

「ははっ切り札か！あながち間違いやないやろうけんど……。…ほんで、どない」

…？

今何を言いかけたんだろ。

ちらり、とコートの中を見ると相手がやっと動いて、速攻がコートに叩きつけられていた。

それによってこっちは持ち直しが突き崩され、嫌な雰囲気が流れる。

……ここに俺が、入ったとしたら。


「…そうですね、


俺なら……勢いのまま乗せられます」

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