続 先代のNo. 1リベロは

六十話 ページ11

黒須(監督) side

春高の代表予選準決勝第１セット、一応こっちが取って終了した。

やけど良い状態で取れたとは言えんかった、何故ならセット最後の点は向こうのミスやったからや。

他にもいまいち力が出し切れてへん。

こうなると２セット目からは厳しいと感じた俺は、リベロを変えた。


リベロ交代に応援席や向こう(対戦相手)も戸惑いを隠せてへんかった。

そらそうや、普通流れ変えたいんやったらフルで出れんリベロよりもリリーフサーバーとかを入れた方がええ。


俺もそう考えとった、そう思ったから控えてるベンチを見たら

Aの、静かに見とる姿が目に止まったんや。



Aはレベルが高い。

リベロとしてはもちろん、鋭い観察眼に戦術の組み立て、そんでそれを実行出来るように支えられる実力。

本入部したてん時にやった一年と二、三年試合がええ例やな。



中学でもバレーをやっとったんに、なんでこんなにも無名なんか気になったくらいや。



ほんで、気がついたらAを呼んで

『この状態、Aはどない出来る？』

こう言っとった。


『勢いのまま乗せられます』

Aはタイミングのズレなんかで空回りしとるっちゅう見方を言うてきた。

そんでそのズレは相手が錯乱して俺らに起こさせてる、とも。

気づいて直そうとしてもそんまま錯乱され続けられれば、しびれを切らして逆に自滅しかねへんこと…

…俺が思うてたことはAもほとんど気ぃついてたみたいやな。


まあ外から見てれば大体はわかるやろし、だからこそどないできるかを聞いたんやけどな。


ほんなら俺がリベロ交代させんのもわかっとるんやろな、Aの安定した支えはもちろん

もしここでAが失敗しても立て直せるきっかけになるっちゅうこともな。









…にしても、切り札みたいて。


Aは切り札で収まる枠やないと思うけどな。

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