雪のように美しい君に恋をしてしまった【キルア】其の二 (ページ10)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:17,577 hit

ゾルディック家編 51 ページ10

『……貴方は、』

キルアの祖父ですか、と続く言葉よりも先に
ご老人が歩き出した。

着いてこい、という事らしい。

歩きながら目の前を歩くその人を見ていた。

…ご老人、という言い方には語弊がある気がする。
容姿だけ見れば、確かに年老いただけの老人に見える。
しかし身に纏うオーラそのものは恐ろしい程に熟年されていた。

この人がゾルディックの年長のいうのならば、一番の力の持ち主は間違いなくこのご老人だろう。

「…そう思考を巡らせ警戒するな。何もせんわい」

無意識のうちに警戒していたのだろう。
その言葉にハッと我に帰ったと同時に驚いた。

感情を隠すのはそれなりに得意だ、
気配を消すのも。

なのに、ほんの一瞬、それだけで私の思考を
完治してしまうのだ。この人は。

『どうして私をキルアの元へ…？
貴方方ゾルディック家にとって、キルアを連れて行こうとしている私は邪魔なはずでしょう。』

問い掛けても暫く沈黙を貫いていた。
数秒後、軽い溜息を吐いたように口を開く。

「わしはなーんも知らんわい…キルアの事はシルバに任せとる。それに、あいつが誰と関わろうとわしには関係ないからな」

あまりにもその答えがあさっさりしていて
流石に拍子抜けせざるを得なかった。

この家の人間は、たとえ血縁だろうと興味がないのだろうか。
ただ依頼を遂行する人形として役目を果たすだけ。

「…さて、ここじゃ」

ギギ…と重々しい音を立てて扉を開く。
先に老人が入り、その後に続く。

ここに、キルアが…

足を進めていた決意が、こんなところで。という具合に不安となって多少緩んだがかぶりを振ってかき消した。

＊＊＊

「じーちゃん！」

硬く冷たい鉄の壁に囲われた独房に
ミルキの声が響いた。

その声は先程扉から入ってきた2名に向けられる。

「…って、お、お前…！！！」

人差し指を私に向け、口を金魚のようにパクパクと開いていた。

私はそれを無視して、奥にいるキルアを見ていた。

キルアもまた、他の誰でもなくAを見ていた。

その瞳は戸惑いに見開かれ、何故きたのか。という疑問と期待に揺れていた。

「じーちゃん！！なんで連れてきたんだよ！！！」

「キルアに会いたそうだったからな、…キルア、もう行っていいぞ。」

「ん」

ガシャンと音を立ててキルアを吊るしていた手枷を千切り落とす。

「駄目だよ！
こいつまだ全然反省してないんだぜ！！」