雪のように美しい君に恋をしてしまった【キルア】其の二 (ページ8)

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ゾルディック家編 49 ページ8

部屋内部に入ると、一番最初に目に入ったのは
大きな犬…一瞬“ミケ”と同種だと思ったが
あっちよりも知性があるように見える。

「座れ。」

『…はい。』

否応なし、と言ったところだ。
拒否なんかできない、座らない理由もないけれど
彼からは抗えない何かを感じた。

座った後、私からは口を開かず
彼から話題が振られるのを待っていた

「…A、と言ったか。
俺の名はシルバ、キルアの父親だ。」

『はい』

張り詰める緊張感の最中、彼…シルバが口を開いた

「…キルアを連れ戻しに来たって？」

もう、なにもかも筒抜けと言ったところか。
ならば何を隠す必要もない。

『そうです。』

「連れ戻す、という言葉に引っかかるが。
キルアは自らここに帰ってきた。」

『知っています。…イルミから、聞きましたから』

「ならば、それを知っていて何故？」

『……キルアの意思は、そこにないからです。』

少しの溜めの後、私は膝に置いた手のひらを
ぎゅっと握って口を開いた

『殺し屋に感情は要らないだとか…友達を作る必要はないだとか……キルアにだって心は有るのに。』

「…イルミか、それはあいつの価値観であって、
俺はそれをキルアに許容した覚えはない。」

『殺し屋として育てられた環境が彼をそうしたのなら同じ事だわ。』

「キルアは、殺しを嫌っていると…？」

どうして、この人は、そんな事もわからないの？
父親として側にいてキルアが苦しんでいることも
気づいてあげられなかったというの？

あんなにも、キルアは…

『…キルアは、心の優しい人です。
私の抱えていた闇でさえ、包み込んでくれるような……彼はッ絶対に闇人形なんかじゃないわ！！

人の命の重さがわかる、人間よ！！』

思わず、身を乗り出した。
自分の胸を苦しめるが如く無数の棘が心臓を貫く

どうして、何故？という感情と
キルアの心の苦しみを思い悲しさと悔しさが溢れた

「………お前は、キルアにとって何だ？
…お前にとって、キルアはどんな存在だ。」

その質問に、身体中が凍りついた。

…キルアにとって、私は…？

私にとって、キルアは…

『私にとっては、大事な仲間よ。
…キルアが私を必要としなくても、キルアにとって必要な仲間がいる限り、私はキルアを連れ戻す。』

そうだ、それで十分だ。

シルバは、私の瞳を見定めるように見た。
まるで心の奥底を覗かれているように。

「いいだろう。キルアを解放しよう。」