雪のように美しい君に恋をしてしまった【キルア】其の二 (ページ7)

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ゾルディック家編 48 ページ7

試しの門前にいた時はあれほど遠くに感じていたゾルディック家の屋敷に私は入っていた

自らをキキョウと名乗ったゴシック服の女性は、カルトというゾルディック家末っ子に任せ内部へと消えた

「……こっち」

案内されている道中の廊下は、細長く
壁に備え付けられた蠟燭の光のみで照らされていた

目の前を歩く小さな少年 ─ 少女かもしれないが ─
を見つめながら、淡々とその後を追う

そして私は、彼がキルアの兄弟だと知ってから疑問に思っていた事を口にした

『…貴方は、
殺しをしたくないと思った事はある？』

私の質問に、彼は答えなかった
私は諦めて下を向きながら歩く

暫く沈黙が続いてから、彼が口を開いた

「僕は今…お前をやれるよ」

ピタリと止まった彼に合わせて私も歩みを止める

くるりと振り返ったその瞳は
闇の世界で生きているのだと教えてくれた

どこまでも真っ黒で、底が見えない
殺し屋としての素質

「兄さんを奪おうとするお前達が、僕は憎い」

兄さん

つまり、それはキルアの事だろう

『…ふーん、成る程ねぇ…貴方、兄さんが…

キルアが大好きなのね』

私がそう言うと、カルトは目を見開いてから
さっきまでずっと無表情だった表情を崩し
私を睨みつけた

「……調子に乗ってる？」

『乗ってないよ。…ただ、キルアの事になると感情的になる貴方に興味が湧いたから。』

ピクリと眉を染めるその顔は
図星と取っていいだろう

「……僕、感情隠すの下手？」

『…………どうして感情を隠す必要があるの？』

一瞬、目を見開いてから、再び身体を前に戻し
歩き始めながら口を開いた

「……兄さんが…イルミ兄さんが、殺し屋は感情を捨てろって言ってたから。」

“イルミ”という名を聞いて、私の身体が強張る
弟達にとって、イルミはどんな存在なんだろうか。

家庭の事情もあるのだから
他人が口出しするような事じゃない

それを目の前の彼が普通だと思って受け入れてきたのなら、もう私が何か言うところではないだろう

…けど。

けど、キルアがそれを普通だと思わず
本当の意味で、彼が自分の人生を生きる事が出来ないというのなら。

それなら私は、彼を何度でも救おう

これから会う、彼の父だという人に私の意を伝え
それで駄目だと言うのなら、力づくでも…

『(…連れ戻す。絶対に。)』

案内され、目の前にそびえ立つ存在感のある扉

その扉の向こうから、威圧のある声が響く

「…入れ」

私は扉に手を掛けた