雪のように美しい君に恋をしてしまった【キルア】其の二 (ページ4)

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ゾルディック家編 45 ページ4

『……いの、ち…』

私は両手を胸に押し当てた

そこに有る者を、確かに感じる為に。

「…そうだ、友達には無理でも、仲間には預けられるモノ。それが、命だ。私はそう思っているよ」

収束できなかった私の中の疑問が
スウッ音を立てて消えたような気がした

私のその心を写すかのように
雲によって隠されていた月が姿を現し
私の身体を月光が注いだ

「だから、大切にしなさい。君の、仲間達を。」

わたしは力強く頷く。

もう迷いはなかった

絶対に、キルアを連れ戻して、言ってやるんだ。

例え君が私を必要としなくても、
私には君が必要なんだと。

そうだ、それだけでよかったのだ。

『ゼブロさん、ありがとうございます。
私、絶対に、キルアに会いに行きます。』

「ああ…その為にも、明日から特訓しないとね」

私は立ち上がり、その場を離れ歩く
そして立ち止まった。試しの門前で。

「Aちゃん…？一体何を……」

『…ごめんなさい、ゼブロさん。
ゴン達にも謝っておいてください。』

…抜け駆けする事になってごめんね、みんな。

でも、意思が固まった今
早く君に会いたくて堪らない

私は大きく深呼吸した

そして、フードに手をかけ、外す

露わになった私の黒髪に、月光が注ぎ
キラキラと青色に反射する

ずっと、長い間お世話になってきたフード付きのマントを身体から外し、表面を撫でた

その布に染み込んだ、飛行船の時の血痕
それに触れ、瞳を閉じる

…キルア

試験中に見てきた、君の表情

第1次試験の生意気な態度も
2次試験で始めて間近で見た整った顔も
3次試験で私を包み込んでくれた暖かさも
4次試験で知った、君の弱さも

最終試験…最後に見た、君の悲しい顔も。

私が救われた君の優しさを、

今度は私が返すんだ。

『…ゼブロさん、これ、持っていてください』

驚きながらも投げられたそれを慌てて受け取り
彼は見たのだ

振り向いた彼女の、この世の物とは思えぬ

美しい姿を。

夜風に当たりなびく絹のような黒髪が宙を舞い
月光に照らされ青色の光を反射させた

驚く程に白いその肌も月光が照らし
輪郭が金色に彩られる

そして透き通ったその瞳は
チラチラとオーロラのような輝きが散る

目を奪われるとは、この事かと、ゼブロは思った

そして彼女が今までこの布一枚で世界を隔ててきた理由を理解した

『…私にそれは、もう、必要ありませんから』

そう言った彼女は、試しの門に手を触れた