雪のように美しい君に恋をしてしまった【キルア】其の二 (ページ12)

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ゾルディック家編 53 ページ12

ドクン、ドクンと胸の音。

大きな猫目のサファイアの瞳が私を捉えて離さない。…いや、離せなかった。

口にチョコを含ませた際に宙に浮かせたキルアの腕が中途半端に浮いたまま、やがてポスンッとソファーに落ちる。

ドクン

ドクン…

まるで世界が無音になったような
そして永遠にも感じる感覚。

胸を締め付けるこの想いは…？

ぐるぐると渦を巻いて言葉に出来ない。

沈黙を先に破ったのは、キルアだった。

「……なんでさ、きたの？」

コツン
とキルアが自分の額と私の額をくっつけた。

お互いの額で触れ合い混ざり合う髪が
ふわりと肌をくすぐった。

『な、んでって………』

そんなの、ただ一つだけ。

一度だけ伏せた瞼をゆっくりと瞬きをしたのち
キルアの瞳を真っ直ぐと見つめた。

『キルアが、大切だからだよ。』

曇りない言葉だ。
ずっとそれだけを想って、キルアが大切だから…
仲間だからここまで来たんだよ。

その想いが伝わっているのかいないのか
キルアが軽く俯き、表情を読み取ろうとも前髪のせいで隠れてしまう。

「は～～～～…っ、お前さ……」

くっついていた額を離し、流れるように私の肩口に額を押し付けた。

「ほんっと………恥ずかしい奴………」

『！！…………キルアが聞いたんじゃない……』

私がそう返すと、キルアは一際大きなため息をつく

そんなに嫌だったのなら、助けに来た時に突き放してくれればいいものを。

……なんて、もう何を言われようとも私は君から離れないと決めたけれど。

「………俺さ、お前に酷い事言ったんだぜ…？

…それに、裏切った。」

そう言われてハッとした。

私だけじゃ、無かったのかもしれない。
私が君を助けられなかった事を悔やんだように

君も────

ふわりとキルアの背に手を回す。
キルアの身体がピクリと反応したのが背中に置いた両手から伝わった。

『……君は…私の、……

…希望だもの。』

一層肩を震わせた彼が私の肩口から顔を上げ
私の瞳を見つめた。

その綺麗なサファイアの瞳には
透明な膜がキラキラと輝いて見えたのは

私の気のせいだろうか。

「………A、」

いつぶりだろう、こうして真っ直ぐ
キルアの瞳を見つめながら話をするのは。

私は両手でキルアの両頬を包み込んだ。
親指でキメ細かい頬を撫でる。

そうか、あの時も…

第四時試験の時もこうして話をしたっけ。

思い出しクスリと微笑んで彼に言った

『私はキルアがいなきゃ駄目なんだから』