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食器をシンクに運んだ。積まれた皿、使いっぱなしの包丁やら鍋やら。



「……めんどくさいし、いっか。」



逃げるように台所から立ち去る。



煙草とライターを持ってベランダの窓に手をかけて、



「おねーさん、俺にも一本くれよ♡」



するりと後ろから私の手に刺青の入った大きな手が重ねられた。



「……人の後ろに立つのが好きなの?」



「いんや、あんたの反応が見たいだけ。」



お、眺めけっこーいいじゃん、と私の手ごと窓を開けてベランダに出る。私もその後を追った。



「そーね。歌舞伎町のあたりなんてギラギラしてて明るいね。」



「あー?あんなとこ、色もねぇし見栄だけ張ったつまんねぇ町だろ。」




ベランダに手をかけてよっかかる半間くんはどこか大人びていた。




「ねぇ、半間くん何歳?」



「おいコラ、ルール違反だのなんだのって何度も人のこと気絶させたやつだれだコラ。」



「いいじゃない。この家の主は私。主役は私。ルール決めて当然でしょ。」




自分でも中々横暴なことを言ったとは思う。


ちらりと半間くんに目をやった。









「"主役は私"……ねぇ。



___ばはっ、!くく…ふはっ、はは、 !」









くるりと反転してベランダに背中を預ける形になり、灰色の空を見上げながら笑い始めた。

くつくつと喉を鳴らして、罰と刺青の入った手で顔を覆う。






「頭殴った時にやり過ぎた……?てか笑い方変ね。」




「別にイカれてねぇしほっとけ(笑)


……17だ。今年で18。」



未だに笑いが収まらず、口元を緩ませながら言った。



「うわ、若いな。まぁ年下だとは思ってたけど。」



「おねーさんは?……あ、自分から聞いたんだから気絶させんのナシな。」



煙草に火をつけながら考える。まぁ歳だったらいいか。



「ん?んー……今年で21。」



「そんな変わんねーじゃん。おねーさんってほどでもねぇな。」



「そう?……半間くんはどこから来たの?」



「色がなくて見栄ばっかのつまんねぇ町。」



「あぁ、だからあの物言いね。」



「あんたは?」



「……色々なとこを転々としたからなぁ。忘れちゃったなぁ。」



「へぇー。まぁ俺も親の顔なんか知んねぇけど。」




くだらない質問が続いていく。


お互いの地雷を踏み抜かないように、静かに、細心の注意を払って。


時々混じる笑い声が話を盛り上げていった。





それがなんだか、心地よくて、懐かしかった。

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作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時

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