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「………マジで痛てぇんだけど。うわ、口切れてんじゃねぇか、だりー。」




「ルール違反をしたのはそっち。裏拳なんて優しい方よ。」





裏拳をした後、私は男の上から退いて、救急箱を探しに棚を漁った。




「……で、君の名前は?」



「そーゆー映画あった気がすんなぁー。」



「なに、消毒まで痛くして欲しいの?」



「へぇ〜、んなサービスまでついてんの?、っいってぇなァ!けが人には優しくしろって知らねぇの…っ、ぃ"っ」




腫れた右頬に強くガーゼを押し付ける。本当はもっと痛いやり方があるが、これはまた今度の罰としてとっておこう。






「……で、名前は?」




救急箱をポイと投げ捨て、立ち上がってベランダの方へ行く。



今日もひと雨降りそうだな。






「知ってどーすんだよ。なんだ、俺を置いといてくれんのかー?」









「うん、そーすることにした。」








「そーかよ…………は?」








男は目を丸くして、顔をひきつらせた。なんだ、可愛い顔も出来るじゃないか。




「だから、住まわせてもいいなと思って。どーせ行く場所とかないんでしょ?」




「……いや、意味わかんね、」




「おもしろそうだから。あ、煙草とって。」




「は?だからそういうことじゃなくて」




「じゃあなんで?なんで私の部屋の前にいたの?」







窓を開けた。昨日の雨の匂いがまだ残ってる。



……雨の日は、証拠が残らないから楽なんだよな。



男に目をやると口を大きな手で覆っている。


あ、ガキのくせに刺青入れてやがる。









「……半間だ。半間修二。」






悩んだ末ってことだろうか。布団の上に投げ捨てられていた煙草とライターをとって男…半間くんは立ち上がった。


煙草とライターを受け取って、箱をとんとんと揺らし、一本取り出す。


かちゃりと火を灯らせて、すーっと煙で肺を犯す。



息をゆっくり吐けば、曇りの空と煙が混ざって、視界が濁った灰色に変わってゆく。





「半間くんね。」



「そー。おねーさんの名前は?」



半間くんは私の手から煙草とライターを奪って、一本取り出し、火をつけた。





「コラ、あんたどーせ未成年でしょ。」




煙草を奪って、ぐしゃりと手の中で潰す。


じゅっ、と手の平をナイフで刺されたような感覚を楽しむ。




「……あんた、ヤベぇ奴だろ。」




「嫌いじゃないでしょ。」




「さいっこー♡」






類は友を呼ぶとは、よく言ったものだ。

3.半間side→←1.



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作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時

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