2. ページ4
「………マジで痛てぇんだけど。うわ、口切れてんじゃねぇか、だりー。」
「ルール違反をしたのはそっち。裏拳なんて優しい方よ。」
裏拳をした後、私は男の上から退いて、救急箱を探しに棚を漁った。
「……で、君の名前は?」
「そーゆー映画あった気がすんなぁー。」
「なに、消毒まで痛くして欲しいの?」
「へぇ〜、んなサービスまでついてんの?、っいってぇなァ!けが人には優しくしろって知らねぇの…っ、ぃ"っ」
腫れた右頬に強くガーゼを押し付ける。本当はもっと痛いやり方があるが、これはまた今度の罰としてとっておこう。
「……で、名前は?」
救急箱をポイと投げ捨て、立ち上がってベランダの方へ行く。
今日もひと雨降りそうだな。
「知ってどーすんだよ。なんだ、俺を置いといてくれんのかー?」
「うん、そーすることにした。」
「そーかよ…………は?」
男は目を丸くして、顔をひきつらせた。なんだ、可愛い顔も出来るじゃないか。
「だから、住まわせてもいいなと思って。どーせ行く場所とかないんでしょ?」
「……いや、意味わかんね、」
「おもしろそうだから。あ、煙草とって。」
「は?だからそういうことじゃなくて」
「じゃあなんで?なんで私の部屋の前にいたの?」
窓を開けた。昨日の雨の匂いがまだ残ってる。
……雨の日は、証拠が残らないから楽なんだよな。
男に目をやると口を大きな手で覆っている。
あ、ガキのくせに刺青入れてやがる。
「……半間だ。半間修二。」
悩んだ末ってことだろうか。布団の上に投げ捨てられていた煙草とライターをとって男…半間くんは立ち上がった。
煙草とライターを受け取って、箱をとんとんと揺らし、一本取り出す。
かちゃりと火を灯らせて、すーっと煙で肺を犯す。
息をゆっくり吐けば、曇りの空と煙が混ざって、視界が濁った灰色に変わってゆく。
「半間くんね。」
「そー。おねーさんの名前は?」
半間くんは私の手から煙草とライターを奪って、一本取り出し、火をつけた。
「コラ、あんたどーせ未成年でしょ。」
煙草を奪って、ぐしゃりと手の中で潰す。
じゅっ、と手の平をナイフで刺されたような感覚を楽しむ。
「……あんた、ヤベぇ奴だろ。」
「嫌いじゃないでしょ。」
「さいっこー♡」
類は友を呼ぶとは、よく言ったものだ。
126人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時