18.半間side ページ20
俺の顔に、Aさんの涙が流れ落ちる。
「半間くんの、ばか、死神ぃ、!」
「…懐かしい呼び名だな。知ってたのかぁ?」
はらりと舞った髪を耳にかけ直す。そのまま優しく手を包み込まれる。
「調べたのよ、わたしこれでもころしやなんだから、!」
「おーおーこわいこわい。ま、俺もちゃんと調べたぜ?殺し屋さん。」
「でも、ほんとに、さいごかとおもった、」
「あんときは俺も死んだかと思ったわ(笑)Aさんのとこ戻ろうとしたらよぉ、ゴミがわんさか出てきて、」
「は!?な、逃げろって言ったのに!」
「女置いて逃げるわけねぇだろ。ましてや、ずぶずぶに惚れ抜いた女なんて特になぁ。」
…たしかに、あの頃とは変わっているかもしれない。
ほっとした顔も怒った顔も、心の底から笑った顔も、あの無機物感とはまた違う。
「きれーだなぁ。」
「……ばは、」
「お、笑い声うつったな。」
「半間くんの変な笑い声と一緒にしないで。
……え、なに、ぅわ、っ、」
「はは、色気のねぇ声(笑)」
重い体を起こして、Aさんを抱き上げる。
あいつの死体を残して、13階…屋上に出る。ゆっくりとAさんを下ろして、屋上の低い塀の前へと手を引く。
俺は塀を昇って、深い青と、赤、黄色、黒、色の混ざりあった空を見上げた。
いつかのベランダで見た空よりも、何百倍も胸が踊る。
「なぁ、Aさん。俺と一緒に色のある世界、見たくねぇ?」
くるりと塀の前に立ちすくむAさんに背を向けた。
「色のある世界、きっと楽しいね。」
Aさんも、塀の上へ立つ。2人で手を繋いで、濁る空を見つめた。
「ひとつ屋根の下、"死神"と"殺し屋"のサーカス。
ばはっ♡想像しただけで興奮するわ!!♡」
知ってるか?サーカスってのは夜に映えるんだ。
「ばは、きっと騒がしくて、奇妙で、惹かれるんだろうねぇ。」
いつかの日に、稀咲が教えてくれたことだ。
「Aさん、愛してる。」
朝日が昇る。
「半間くん、私も愛してる。」
サーカスは終わった。
でも、サーカスの本当のマジックは終わったあとに発揮される。
こんなことも言ってたなぁ。
帰り道の胸騒ぎと高揚感。
味わいたいなら、またおいで。
主役は二人。"死神"と"殺し屋"。
ひとつ屋根の下で繰り広げられるサーカスへ。
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作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時