16.半間side ページ18
「うるさいんだよ！！！」
何かがキレたようだった。眉間に向けられる銃口が震えている。
「雑音なんだよお前なんか！！！！
いらないんだよ！！邪魔なんだよ！！！！
私は、わたしはっ、！！！！
……ち、ちがう、ごめんなさい、ごめんなさい、お兄ちゃん、ごめんなさい、
あいつが、こわかったの、お兄ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさぃ、ごめんなさ、っ、」
幻覚が見えているのだろうか。パニックになっているのだろうか。
何かから身を守るように、小さな手で頭を抱えた。
冷たいコンクリートに、水玉模様が描かれていく。
ギリギリと縛ってある手首の縄を腕を使って緩めようと試みた。ベランダで教えてもらった拘束具の外し方だ。
ボロボロの足に力を入れて、ゆっくり膝を立てる。ゆらゆらと立ち上がる俺をみて、Aさんは後ずさりながら、銃口を心臓に向け直した。
「っ、来るなｯｯｯ！！！！近づかないで！！
気づいてんでしょ、私は殺し屋だ
あんたの何十倍も汚れてんだよ！！！！
来るな、それ以上近づいたら撃つ、
やめろ、来るなって！！なんでよ、来ないでって、言ってるでしょ、
ちがうの！！！あの頃の私とはちがうの！！！！！」
大粒の涙を流すAさんを抱きしめた。
「ばーか、出会った日のAさんなら、もう3発は撃ってるぜ。」
胸に、硬い銃が押し当てられる。引き金が引かれれば即死だろうな。
胸の中で、弱々しくAさんの口から言葉がこぼれていく。
一つ一つ、飲み込まれていたものだ。
「わ、たし、12さいのとき、組織に、兄と売られたの、
お兄ちゃんは、わたしは殺す必要ないって、わたしの仕事の分まで手を汚して、
ぜんぶ、全部わたしのために、
いつのまにか、それがあいつにばれて、
あいつに、兄をころせって、わたし、こわくて、いきたくて、
しりたく、なかった、
色のある世界なんて、知りたくなかったよ
ねぇ、半間くん、
＿＿＿わたしが、こわい？」
胸の中で、銃口が再び心臓に向けられたことを感じた。
俺は、抱きしめたまま、柄にもなく本音を出した。
「Aさん、愛してるぜ♡」
「＿＿＿知るか。」
廃墟ビルの12階。
1発の銃声が響きわたった。
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作者名：すき子 | 作成日時：2021年8月14日 18時
