12.半間side ページ14
「あー…買った買った。」
服や食器に生活必需品を全て買い揃えた。ゲーセンはなしと言われたので、今は帰路についてる。
「だりぃ……なんで全部俺に持たせんだよ。」
「うるさい。さっさと帰るわよ…………ぁ、っ、」
前を歩くおねーさんが急に止まる。人混みの前に、同じく立ちすくむ男が立っていた。
たぶんこの男に足を止めているのは考えられた。おねーさんは俺の腕を掴み、路地裏に連れ込んこみ、壁に押し付ける。
「っ、おいなんだよっ、!」
「……半間くん、私が合図したら左の路地に走って。」
「はぁ?」
顔を覗き込めば、さっきまでの緩んだ顔ではなく、スイッチの入った顔をしている。
「もし、誰かに追いかけられていると感じたら、アパートに帰っちゃダメ。集合場所はコレに書いてあるから。無理だと思ったら、この場所にも来なくていい。あと、危ないと思ったらこれ使って。」
「は、?」
握らせれたのは小さな地図と、拳銃だった。
「いい?弾は6発。殺る時は腹部に2発と必ず眉間に1発。でも殺されると思った時は絶対逃げて。的を絞らせないように左右を使うの。いいね?」
状況が上手く飲み込めない。
状況を飲み込もうとしたって処理できないのはわかっている。
おねーさんは、大きく深呼吸をして、言い聞かせるように俺の後頭部を掴んで目線を合わせた。
「これで会うのは最後かもしれない。だから教えてあげる。
私の名前は五島A。」
優しく微笑みながら、名前を教えてくれた。
「A、」
響きのいい名前を、噛み締めるように発音する。
「走ってッ!」
合図とともに背中を押された。振り返ようとは思わなかった。
口角が上がる。
心臓がなる。
後ろから足音は聞こえない。
幸いこの辺りは良くお世話になった路地だ。
「っは、…はっ、はは、っ、なにが会うのは最後だよ、最後にしてやるわけねぇだろっ、」
路地を右に曲がって、道に合流するように走る。
なぁ稀咲ぃ、サーカスもそろそろ大詰めだ。
最後まで、鮮やかに、楽しくいかねぇとだよなァ♡
126人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すき子 | 作成日時:2021年8月14日 18時