38短いロウソク ページ39
『全員この船から降りろ!……って総悟テメェもだよ!』
数秒前、この船に時限爆弾があることを説明した。
土方が隊士に向かって指示を出す。私はそれを黙って聞いていた。総悟がふざけているのか、ときおり怒声も聞こえた。
「近藤さんは無事か?土方?」
『あ、ああ』
「良かった」
彼は私以上に真選組で必要とされている。そんな近藤さんが私のせいでケガをしたらと思ったが……。無傷で何よりだ。
『副長、1番隊から8番隊の隊士は避難しました!』
山崎の声。
『そうか、よし。俺達も降りるぞ』
──やばいっ!
そのセリフの直後、私のいる部屋の天井の一部が落下してきた。金属同士がぶつかり合うような音。
幸い、私に直撃はしなかったが、爆弾の周りはすでに鉄くずの山と化していた。
私は、死ぬ。
そう改めて思うと、怖くてしかたがなかった。
恐怖で身体は震え、目尻に涙が溜まるのがわかる。
『……今の音はなんだ?』
どうやらさっきの鉄くずの落下音が携帯電話をとおして聞こえたらしく、心配した土方が私にそう尋ねた。
この船にいることがバレてはいけない。
「……近くで工事が行われてて……多分、その音だと思う」
ボロを出さないように一言一言を慎重に選ぶ。
土方のことだ。私がこの部屋に閉じ込められていると聞いたら、必ず助けに来るだろう。そんなことはさせない。
そう思ったとき、
『……たった今、俺と近藤さんも含め真選組全員が避難した』
……良かった。
一筋の涙が頬を伝った。こんなにも涙腺が緩んでしまったのは、年齢のせいなのか。それとも安心したからか。
まあどっちだっていい。
あとは、少しでも遠くへ逃げてくれれば。
ふと、上を見上げれば赤い光が目に入った。
爆弾が爆発するまで、あと4分。1秒1秒が長く感じ、今までの出来事が走馬灯のように頭の中で流れていく。
真選組に来た初日。
近藤さんは昔と変わらず大らかだったこと。
総悟と久しぶりに会ったこと。
土方に敬語で話せと言ったにも関わらず、慣れないのか未だに定着しないこと。
『なあ、頼むから答えてくれ。本当に安全な場所にいるんだよな?』
「……」
『Aさん?』
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アオト(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。な、泣いたですと!?作者として非常に嬉しいです。今のところ続編は考えてませんが、もし新作のネタに困ったら作るかもしれませんf^_^;) (2015年12月11日 23時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - とっても面白いです!!良すぎて読みながら泣いてました!!続編に続いて欲しいです!! (2015年12月11日 15時) (レス) id: cfd050b9dc (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 通りすがりの加藤さんさん» いえいえ!こちらこそ長い間あやふやにしてすみませんでした。 (2015年6月25日 22時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの加藤さん(プロフ) - アオトさん» なるほど!ご説明ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o))) (2015年6月25日 7時) (レス) id: 204089a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - イチゴさん» イチゴさんありがとうございます!説明下手ですみません。もし続編or番外編を書くことになったら、この夢主復活までのお話を書きたいと思います(^_^) (2015年6月24日 20時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月26日 21時