37姉として、旧友として ページ38
『Aさん、アンタ今どこにいるんですか』
電話の向こうから聞こえてきた土方の声は、いつもより異様に暗かった気がした。
私は巨大な時限爆弾にもたれかかるように座り、未だに出血し続ける身体を見下ろす。ピクリとも動かなくなってしまったそれはまるで壊れたからくりのよう。
「土方、今どこにいる」
『俺の質問は無視ですか』
「いいから」
『……桐島一派の船にいる。アンタが拉致されたと聞いてここに来たんだ』
もうこの船にいたのか……。
早く逃げなくては、爆弾が爆発する前に。
「全員を連れて逃げろ」
私のセリフに一瞬、土方の言葉が詰まる。
「その船には時限爆弾が仕掛けられている。もう残り時間はほとんど残ってない……だから、一刻も早く遠くへ避難するんだ」
『Aさんは?』
「私はもう安全な場所にいる」
──嘘。
土方につく嘘は、これが初めて。
そして、これが最後。
安堵の溜め息が聞こえた。
『わかった。じゃあ今すぐ全員に避難するよう伝えます。あとでまた電話してくれ』
電話を切ろうとした土方に、私は慌てて声をかけた。途端に、疑念のこもった返事がくる。
「このまま……切らないで」
『……?』
「お願いだから」
『はあ』
少し呆れたような様子。
何気ないその仕草が、私の胸を締め付ける。
そして、ずっと気がかりだったことを尋ねてみた。
「総悟は?」
『今横にいる』
予想外の返答に思わずどもる。
「あ、そ、そうか。いや何でもない」
『ふ、昔みてェだな』
「……」
少し、泣きそうになった。
もう私に残された時間はない。
総悟にまだ謝ってもないのに、土方に本当のことも言ってないのに、あっさりといなくなってしまう私は昔と何も変わらない。何も成長していない。
桐島に撃たれた脇腹のほうが痛いハズなのに、
心のほうがずっと痛いんだ。
電話越しに聞こえる土方の声、近藤さんの声、総悟の声が愛おしくて仕方がない。
今すぐに帰りたい。
唇を噛み締め、私は携帯電話を握る力を強めた。
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アオト(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます。な、泣いたですと!?作者として非常に嬉しいです。今のところ続編は考えてませんが、もし新作のネタに困ったら作るかもしれませんf^_^;) (2015年12月11日 23時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - とっても面白いです!!良すぎて読みながら泣いてました!!続編に続いて欲しいです!! (2015年12月11日 15時) (レス) id: cfd050b9dc (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - 通りすがりの加藤さんさん» いえいえ!こちらこそ長い間あやふやにしてすみませんでした。 (2015年6月25日 22時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの加藤さん(プロフ) - アオトさん» なるほど!ご説明ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o))) (2015年6月25日 7時) (レス) id: 204089a6f3 (このIDを非表示/違反報告)
アオト(プロフ) - イチゴさん» イチゴさんありがとうございます!説明下手ですみません。もし続編or番外編を書くことになったら、この夢主復活までのお話を書きたいと思います(^_^) (2015年6月24日 20時) (レス) id: d8cd4dea01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2015年2月26日 21時