04.鳴くだけ ページ5
「ああ鶴丸様! アナタは私にとって恩人以外の何者でもございません! 本当にありがとうございます!」
脇差はキラキラと瞳を輝かせ、まるで人形のように固まる鶴丸の手を握り激しく上下に揺さぶる。それでも彼は微動だにしないのだから、相当メンタルにダメージを受けたのかもしれない、と審神者が懸念した刹那……「はっ!」と鶴丸は自己を取り戻した。
「き、君はあの脇差なのか!?」
「そうですよ」
「本当に本当に本当に俺が拾った脇差なのか!?」
「ええ!」
「〜っ! こんっなに驚いたのは久しぶりだ! むしろ俺の方が感謝を述べたい! 刺激的な驚きをもたらしてくれてありがとう!」
「喜んでいただけて何よりです!」
なごやかなムード。まあ、最悪な展開を迎えなくて良かった……と審神者は肩をすくめた。政府だとかそういう面倒なことは後回しにして、今はただ純粋に彼女を歓迎しよう。なんせ審神者にとって脇差はもうすでに、自身が顕現した“仲間”なのだから。
「とりあえず時間も遅いし、詳しい話は夕餉を食べてからにしよう」
審神者がそう場を締めくくれば、四方から「は〜い」と間延びした返事が飛んでくる。今日は演練やら遠征やら特に忙しい1日だったから、皆もきっと早く休息をとりたいのだろう。
時間遡行軍が仲間になってもなお、通常運転の刀剣男士に審神者はホッと胸をなでおろした。
◆◆◆
「ねぇねぇ脇差さんってオシャレとか好き?」
「オシャレですか? うーん、すみません。そういったことに関しては疎くて。乱様はお好きなのですか?」
「もっちろん!」
「脇差さんは、いつごろつくられたのですか?」
「それが……記憶が不明瞭でほとんど覚えていないんです。でも、今剣様ほど長生きはしておりませんよ! 多分!」
夕餉を済ませた脇差は、そのまま大広間に案内され質問攻めにあっていた。本丸史上初の女の子である脇差を興味深そうに見つめるのは乱藤四郎。彼も一見可愛らしい女の子だが、正真正銘の刀剣男士である。
好奇心旺盛な刀(主に短刀)達に囲まれ、脇差は少し対応に困りつつもその表情はどこか嬉しそうだった。そんな彼女を遠目に、鯰尾はとある疑問を口にする。
「そういえば、脇差さんって名前は無いんですか?」
「名前とは号や銘のことでしょうか? でしたら私のような歴史修正主義者の端くれには存在しませんよ!」
「えっ、まじですかー」
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アオト(プロフ) - 鮎さん» 鮎さんコメントありがとうございます。そう言っていただけると作者としてとても嬉しく思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします! (2017年10月3日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
鮎 - 面白いです!頑張ってください! (2017年10月1日 7時) (レス) id: 5e09735f57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2017年9月23日 13時