02.一から始めます ページ3
「……えっと、これはどういうことなのかな。鶴丸さん」
「頼む主！ この脇差を顕現してくれ！」
「いやでも、それ時間遡行軍なんだろう？」
「ああ！」
「う〜ん……」
本丸に帰ってきて早々。鶴丸はまるで手土産のような勢いで、審神者の目の前に“時間遡行軍の脇差”を差し出した。
さて、どうしたものか。てっきり資材でも見つけたのかと思えば、まさか敵の刀を捕獲したとは。そしてそれを顕現してくれ、とな。とりあえず、こうなった経緯や鶴丸の言い分を一通り聞いた審神者は、顎に手を添え難しい面持ちで考える。
鶴丸国永にとっての生きがいは驚きだ。長年審神者をしている彼──、
いくら刀のままとはいえ、敵をこうして本丸に侵入させたとなると、罪に問われる可能性がある。顕現などもってのほか。
「すまないね鶴丸さん。これは私１人で判断できるような案件じゃないんだよ。もしかしたら、顕現した途端に私達に刃を向けるかもしれない。皆を危険に晒す訳にはいかないだろう？」
「勿論わかってる！ だがもしそうなったら、俺がすぐに倒す！ 俺の一生のお願いだと思って情けをかけてくれ！」
「千年分の願いを今ここで使うつもりかい？」
「そうだ！ 千年分だ！」
「えぇぇ〜……潔いなぁ」
引きを知らない鶴丸。長い攻防戦の末、折れたのはやはり審神者の方であった。あそこまで懇願されては断れるはずがない。ああ、自分はつくづく甘いなぁ、なんて猛省も程々に、審神者はパンっと手を叩く。
「じゃあ今から全員を大広間に集めて！ もしこの脇差から敵意を感じたら、すぐに破壊すること。鶴丸さん、これでいいね？」
ぱぁっと鶴丸の表情は一気に明るくなる。
「ありがとう主！」
「ただし、今回限りだよ。あと政府には黙ってること」
「承知した！」
──……そして全刀剣男士が見守る中、審神者は脇差にそっと触れる。泥土で汚れてはいるものの、刀としての鼓動はしっかりと聞き取れた。
よし。
目を瞑り、手のひらに霊力を込める。瞬間、辺り一面に桜の花弁が舞った。この時点で、通常の刀剣男士の顕現と差異は無い。問題はここからだ。
皆が戦闘態勢に入る。
しかしその花弁から現れたのは、
「お呼び頂きありがとうございます！」
……紛れもない、女士であった。
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アオト(プロフ) - 鮎さん» 鮎さんコメントありがとうございます。そう言っていただけると作者としてとても嬉しく思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！ (2017年10月3日 21時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
鮎 - 面白いです！頑張ってください！ (2017年10月1日 7時) (レス) id: 5e09735f57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年9月23日 13時
