18.夜へ帰る ページ19
さっきのことは忘れよう。A自身、どうしてあんなにも羞恥心に駆られたのか理解できなかった。そしてそれを鶴丸に否定された時、心にずしんと重みを感じてしまった原因も謎のままで。この胸の不快感を拭うように、Aは片付けに専念した。
「……して鶴丸や、何か要件があってここに来たのではないのか？」
「あ、いや」
てっきり燭台切がいるのだと思い込んで、彼を驚かそうと忍び寄った……なんて、言ってもいいのだろうか。うん、やめておこう。何となく。こういう時の鶴丸は頭の回転が早い。
喉が渇いたから水を飲もうと思って、と当たり障りのない理由を並べれば、三日月は依然として微笑んだまま冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り、コップに注ぐことなくそのまま鶴丸に突き出した。突然の荒っぽさに、思わず「は？」と声が漏れる鶴丸。
しかしその刹那、妖艶な三日月の瞳から、威圧のようなものを感じとった。今すぐここを立ち去れ、とでも言いたげな。
鶴丸は察する。彼は怒っている、と。しかも今までにないくらいのマジギレで、なんなら必殺真剣とか出てもおかしくないくらいだと。いや、なんで怒ってるんだ。今の流れにキレるきっかけなんてあったか？ かと言って反論するにも気がひける。鶴丸は少し不満を感じつつも、逃げるように台所を後にした。
普段怒らない人ほど本気で怒ると怖いからなぁ。そもそも、俺の何が三日月の地雷を踏んだんだ。なんて、鶴丸はすっかり醒めきった頭で考える。それに、Aが赤面していたのも気がかりだ。
「……わからん」
あぁ、朝から嫌な気分になった。午後からは長期遠征があるというのに。まあその遠征が終わる頃には、きっと朝のことなど全部忘れているだろうが。
鶴丸は鼻歌交じりに長くて暗い廊下を歩いて行った。
◆◆◆
それから一週間が経った頃。山伏国広率いる脳筋軍団プラス非番の男士達の手によって、ようやくA専用の女風呂と厠が設けられた。勿論これも政府に黙っての改築であるため、経費として落とせないのは審神者の財布に響くが、まあ気にすることでもない。
そんな中、当人であるAは現在、とくに目的も無くブラブラと本丸内の庭を１人歩いていた。景趣は春。見たこともないような綺麗な花がそこらじゅうに咲いている。
「可愛い……」
淡い桃色の花を見つけ、ふと足を止めた。
続く (更新停止中)
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アオト(プロフ) - 鮎さん» 鮎さんコメントありがとうございます。そう言っていただけると作者としてとても嬉しく思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！ (2017年10月3日 21時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
鮎 - 面白いです！頑張ってください！ (2017年10月1日 7時) (レス) id: 5e09735f57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アオト
| 作成日時：2017年9月23日 13時
