11.薬をあげて ページ12
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やけに道場の方が騒がしいな、と先ほど長期遠征から帰ってきた第二部隊の隊長、山姥切国広は不思議に思った。
もしかしてまたあの(問題児)鶴丸国永がわけのわからん戦法を披露してるのか、なんて不安が脳裏をよぎると同時に、呆れの溜め息が漏れる。
以前にも、彼は目くらましなどと豪語して生卵を道場中に撒き散らしたことがあり、言うまでもなく歌仙や燭台切に「食べ物を粗末にするな」とこっぴどく怒られていた。あれで流石に懲りたと思ったのだが。
「あの平安刀は……!」
長期の遠征から帰って来たばかりの山姥切は、正直なところ今すぐにでも床に就きたいほど疲れていた。しかし、執務に集中している審神者に手間をかけさせないよう、本丸内の騒動の芽を摘み取るのは自分の役目。故に、道場に向かう以外の選択肢が彼には無かったのだ。
──渋々……そんな重い足取りで道場に辿り着いた山姥切は、その光景に唖然とする。
鶴丸と手合わせしているのは……女?
「は?」
恐らく赤疲労である山姥切の脳内に、まるでトドメを刺すかのような状況であった。いやそんなことが……と驚愕のあまり思わず後ずさる。
そしてそんな2人を、囲うように見つめる沢山の刀剣男士。
「どうなってるんだ……!?」
予想の斜め上をいく展開についていけずにいると、丁度近くで胡座をかいていた薬研藤四郎が「長期遠征おつかれ」と山姥切に声をかけた。しかし今の山姥切は遠征云々よりも、あの2人……というより“脇差を握っている女”のことで頭がいっぱいだった。
どうして知らない女が手合わせなんかしている。それに、どうして刀を持っているんだ。まさか乱藤四郎と同じ類の新刀剣男士か……?
なんて疑念が顔に出ていたのか、薬研は察したように笑いを零す。
「そうか。第二部隊はまだ知らねぇんだよな。山姥切の旦那、あの人はつい最近顕現された元時間遡行軍の脇差だ。んでもって今は初期能力値を計るための手合わせをしててな。ほら、ちゃんと大将もあそこにいるだろ」
ひょいと指差した先には、確かに審神者が。
この本丸独自の仕組みなのかは山姥切も知らないが、顕現した刀が初めて手合わせを行う際は、真剣……すなわち自身を使用することになっている。
審神者曰く、「その方が正確な数値を調べられるから」らしいのだが、相手が時間遡行軍となると話は別の別の別。
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アオト(プロフ) - 鮎さん» 鮎さんコメントありがとうございます。そう言っていただけると作者としてとても嬉しく思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします! (2017年10月3日 21時) (レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
鮎 - 面白いです!頑張ってください! (2017年10月1日 7時) (レス) id: 5e09735f57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオト | 作成日時:2017年9月23日 13時