01.鶴の一声 ページ1
……それは、いつも通りの出陣であった。
場所は阿津賀志山。部隊長の鶴丸国永を筆頭に見事勝利を収めた彼らは、帰還すべく深い山の中を歩いていた。
そんな第一部隊に編成されたのは、本丸の中でも比較的練度の高い古参の刀達で、今回の戦いも皆が軽傷以下で済むような、取るに足りないものであった。
ああ、驚きが無い。
そうボヤいたのは鶴丸国永。擦り傷ひとつない頬を膨らませ、見るからに不満そうな顔をしている。つまらない、刺激が足りない。そう文句を垂らしては仕方なく足を進めた。
すると、突然彼の歩みが止まる。
茂みの向こうで何かが光ったのだ。
「おい、あそこに何かあるぞ」
「何かって、なんだ？」
つられて獅子王もそちらを見ると、確かに光を反射するものが地面に落ちていた。刹那、ふつふつと２人の中でかすかな好奇心が芽生える。
思い立ったが即行動。お馴染みのフットワークの軽さで２人は茂みに入り込むと、それは自分達と同じ“刀”であることに気づいた。
「この長さは脇差か？」
刀を拾い上げ、鶴丸はまじまじと見つめる。随分と長い間そこに放置されていたのだろうか、鞘は土で汚れ、柄もボロボロになっていた。
「２人ともどうしたんだい？」
追うようにしてやって来たのは、にっかり青江。その後ろから続いて、加州清光、後藤藤四郎、鳴狐が姿を見せた。
「こんなところに刀が捨てられてたんだ」
全く可哀想だよなぁ、と鶴丸が試しに鞘から刀身を抜いた直後、にっかり青江はおぞましい気配を感じ取った。まるで、時間遡行軍と対峙した時のような不快感や緊張感に似ている……まさか。
「鶴丸さん、今すぐそれから離れて」
「なぜだ？」
「その刀は恐らく時間遡行軍のものだ」
鶴丸以外のその場にいた男士が抜刀の体勢に入る。もしかしたら敵に囲まれているのかもしれない。一抹の不安がにっかり青江の脳裏をよぎった。
しかしそんな緊迫した状況の中、鶴丸国永は通常通りの声色で、とんでもなく素っ頓狂な提案をするのだった。
「──なぁ、この脇差を顕現させてみないか？」
これは新しい驚きだ、と彼は笑う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 266人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオト(プロフ) - 鮎さん» 鮎さんコメントありがとうございます。そう言っていただけると作者としてとても嬉しく思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いいたします！ (2017年10月3日 21時) (
レス) id: a3077fa68a (このIDを非表示/違反報告)
鮎 - 面白いです！頑張ってください！ (2017年10月1日 7時) (レス) id: 5e09735f57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオト
| 作成日時：2017年9月23日 13時
